動詞の有界性について
英文法の再発見―日本人学習者のための文法・語法の解説と練習問題
- 作者: ブレント・デ・シェン
- 出版社/メーカー: 研究社
- 発売日: 1997/09/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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第3章「有界性と事態の分類」によれば、動詞は「有界(限界のある、telic)」と、「無界(限界のない、atelic)」なものに分かれるそうである。
なかなか聞き慣れない言葉ですが、こういうことだと理解しました。
つまり、ある動詞を聞いた時に、それが始まりと終りを持つ一連の(たいていは一瞬の)動きを表していると感じる場合がある。それが「有界」。
たとえば「壊れる」と聞くと、元の物が、なにかあって、元の形が失われたりゆがんだりする、という一連の動きを想起するはずです。図示するとこんな感じ。
それに対して「無界」はどういうことかと考えると、たとえば「歩く」と聞いた時に、「止まっている状態から動き始めてまた止まる」という一連の動作を考えることはないはずで、両手両足を交互に出して前に移動するあの動きのみを考えるはずです。それが「無界」のはず。図示するとこんな感じ。
両者の区別として、本書では、
次の条件を満たす時、VPは有界事態を表しうる。あるNPにとって、
It took [time interval] for NP to VP または、
NP took [time interval] to VP(英語)
NPがVP(終止形)のに(は)[期間]がかかった(日本語)
という文が成り立つ(容認可能である)。
(p.21)
次の条件を満たす時、VPは無界事態を表しうる。あるNPにとって、
NP VP for [time interval](英語)
NPは[期間]VP(日本語)
という文が成り立つ(容認可能である)。
(p.22)
という定義を挙げています。それを示したのが上の各図下部の2つの文章です。
ただし両者の用法どちらも持っている動詞もあります。たとえばstand up。
It took thirty minutes for Jim to stand up.
Jim stood up for thirty minutes.(p.22)
さらに、walkは単独では無界動詞としか捉えられませんが、以下のように言葉を足すと有界事態を表していると考えられます。
It took five minutes for Jim to walk across the park.(p.21)
たしかに、公園を横切って歩くなら、その敷地に入ってから出るまでと、かなりはっきり区切りがありますね。
何が厄介かって、「壊れる」、「歩く」は英語の"break", "walk"に対応しているからいいとして、日英で食い違っているものもあるということ。その筆頭が「知る」と"know"でしょう。
日本語の「知る」は、知らなかった状態から知っている状態への遷移を含意するため、有界であると考えられますが、英語にはその用法がありません(そういう遷移は"learn"で表す)。
その他にも、寝る・着るが、日英間の比較対象として取り上げられていました。
図でいうと②と③が結局同じこと(どちらも静的な、ある状態)を指しているのに、出自(?)が違うために形が違うことがあるようです。
日本語では、①を元に②をつくる場合、「〜ている形」にすればよい(例:知る→知っている、壊れる→壊れている)。
これに対して英語では、明確な対応付けがないということです。単純にbe+-ing形にすればよいわけではなく、場合によっては別の言葉を用いる必要もあるとのこと。
①有界事態 | ②有界事態の結果 | ③無界事態 | |
---|---|---|---|
知る | learn | 知っている know | - |
寝る | go to sleep | 寝ている be asleep/sleeping | sleep |
知る | put on | 着ている be wearing | wear |
ただしここまで来ると専門的すぎて最終的にわけわからなくなってしまった感触。汗
読み返して思うのは、
「壊れる・break」を②で表すと「壊れている・be broken」になって、
「着る・wear(put onか)」を②で表すと「着ている・be wearing」と、
ing形かed形かからして違っているのがなんともよく分からない。「壊れる」に含まれている「れる・られる形」がなにやら受け身的な部分を表してそうだけど、よく分からない。
以前書いた過去分詞の「完了」と「受動」をつなぐ - さんだーさんだ!(ブログ版)とも一部つながりそうだけど、さらによく分からない。
ただ動詞の有界・無界は、知っておいていいかなと思ったのでメモしておきました。勉強しなきゃなあ。