今回の章は長いので2回に分けます。本書の中で一番のページ数が割かれています。
◯Some Basic Ideas About Teaching and Learning
実際のカリキュラムづくりの前に、その背景となるいくつか重要な概念を紹介。
- 文法項目が学ばれるためには、期間をおいてくり返しその項目に出会うことが必要
- 言語仕様に必要な知識は暗示的知識(subconsciousをこう訳していいのかは謎…)だが、それはmeaning-focusedな活動(input, output, fluency development)で身につく
- Most Language learning occurs without teaching. なので、教え続けるだけでなく、language-focused learningの際にも個人学習を取り入れるなどが必要
- meaning-focuse input, meaning-focused output, language-focused learning, fluency developmentの4つの活動をバランスよく取り入れることが大切
特にmeaning-focusedな活動は大切で、自分の好きな本を読むとか、L2で議論するとか、L2で手紙を書くとかいった活動がそれに該当する。
いわゆる穴埋め形式のテストや、周囲の手を借りての精読、ダイアログの暗記に、辞書を引きながらでないと読めない文章を読むなどは、meaning-focusedの活動にはあたらないことに留意すべきである。meanign-focusedな活動と、language-focusedな活動を分けて考えられるようになろう、とのこと。
◯The First Steps in Planning a Course
カリキュラムデザインの過程が、8つのパートに分かれた図で示されている。
中心に1.Goalsがあり、それを取り巻く小さな同心円上に2.Content and Sequencing, 3.Format and Presentation, 4.Monitoring and Assessingがある。
2と3の間からは、5.Principles、3と4の間からは6.Environment、4と2の間からは7.Needsが伸びており、それら全てを取り囲む円が8.Evaluationである。
まず考えるべきは、1.Goals, 6.Environment, 7.Needs, 5.Principlesである。2~4,8はシラバスデザインに直接的に関わることであり、後編に譲る。
(1)The goals of the course
コースの最後に、学生が何を知っていて何をできるようになっていればよいか、ということ。以下に例を挙げる。
- elementary listening, speaking, reading, and writingが英語でできるようになっている
- 大学一年次レベルの英語の授業についていける程度の言語知識や勉強の方法を身につけている
- 英語圏の国に旅行した時に、なんとかなる程度の英語力(English for survival purposes)を身につける
- 旅行業界で日々の仕事がこなせる程度の英語力を身につける
そこまで厳密な感じがしないけれど、シンプルな文章で記すことで教員が本当にそのコースの目的を理解しているかが測れる、と。
(2)Environment analysis
Environmentには3つの要素がある。教員・生徒・状況、である。以下のような問いを自問自答してみること。
- コースはどれくらいの期間行われるか
- 週何時間あって、一回の授業は何分か
- 学習者は宿題をするか
- 学習者は毎回の授業に来るか
- 学習者の動機づけは強いか
- 学習者の母語は同じか、違うか
- 誰が授業を教えるか。その人はよく訓練されているか、経験はあるか
- 教科書はあるか
- graded readersを揃えた図書館はあるか。学習者はそれをいつでも借りられるか
- 学習者は教科書を買えるか。買おうとするか
- 学習者はインターネット環境を持っているか
- 教員は自由に印刷できるか。コンピュータは使用可能か
いくらでも質問は考えつくだろうが、大体の場合、一番大事な3つの質問にしっかり対応することが大切。
また、このenvironment analysisは、カリキュラム開始前に考えるだけでなく、カリキュラム中に再考して調整していくことも必要である。
(3)Needs analysis
学習者が既に知っていることと、これから知るべきこと、そして両者の差、という3つの観点から考える。テスト(単語・リーディング・能力(proficiency)など)を利用する他、すでに知られている情報も利用する。
カリキュラム開始前にできるのが理想だが、多くの場合それは不可能なので、開始してからでもいいから、学習者の状況を把握した上でカリキュラムを修正する。
また、大人の学習者を相手にする場合、negotiated syllabusが有効。そのステップは以下のとおり。
まず、教員は最初の数週間で有効と思われる様々な活動を試す。それにより、学習者はどんな活動があるのか理解できる。
次に、2週間が過ぎるころ、それまでにやった活動を黒板に列挙する。それぞれの活動にどんな利点があるのか説明するのもよい。
そして、どんな活動(およびコンテンツ)をやりたいか聞く。学習者は、教員を含めた小グループで話し合う。彼らの提案は黒板に追記される。
最後に、次の2週間の活動が決定される。さらに2週間経ったら、また話し合いを行う。
こうしたnegotiated syllabusの考え方は、学習者が自分のニーズをはっきり認識できている時には有効。このnegotiation自体を英語で行えば、それ自体がよいproblem-solving listening and speaking activityとなる。
(4)Principles
先述の図からは分からなかったが、このPrincipleの中の3つの分類として、2.Content and Sequencing, 3.Format and Presentation, 4.Monitoring and Assessingがあるらしい。図は非常に分かりにくい!(かといって写真撮ってあげるのもなんだか面倒w)
例えばこの本で強調されてるのは"Four Strands"というprincipleである。他のprincipleもある。time-on-task principle, interference principle, spaced repetition principle, informed learners principle, motivation principleなどがそれに当たる。これらのprinciplesへのリファレンスとして章末に挙げられていたのは以下の論文でした。
Ellis, R.(2005). Principles of instructed language learning.System, 33, 209-224.
カリキュラムを単純明快にするために、3つか4つのprinciplesを選んで、それらがしっかりカリキュラムに反映されているようにする。
これらのthe first stepsは、カリキュラム開始前に準備されるのがよいが、それが無理なら始まってから行なってカリキュラムに改変を加えていくことが必要である。
ああここまで1時間くらいか…。次回は具体的なシラバスデザインの話。