さんだーさんだ!(ブログ版)

2015年度より中高英語教員になりました。2020年度開校の幼小中混在校で働いています。

落合陽一さん講演「Computational Diversityへ」

「とあるところ」で,落合陽一さんの講演を聞いてきた。
Youtubeにこれまでの講演動画があがってるし,Twitterもウォッチしてるし,『魔法の世紀』も半分くらい読んだ段階での参加だったためか,初めて氏の講演をほとんど理解できた気がする。予習の重要性。笑

800枚くらいのスライドから,つまみ食いしつつ話を展開していくスタイル。
前半の話は,先月行われた別の講演とほぼかぶっている感じ(以下参照)。
ASCII.jp:落合陽一のライバルはエジソン!? 「現代の魔法使い」の頭の中|スペシャルトーク@プログラミング+

まとめのスライドは以下(ここから講演の記録的なのを書いていきますが,自分の中で解釈して書いてますので記憶違い等多々あるかもしれません。。笑)。

  1. Computational Diversityについて(End to End AI, not 0 to 1 but 1 to 100)
  2. 近代の復習とエモさの追求
  3. やるべきものとやりたいこと
  4. ロールモデルがあるところはレッドオーシャン,ないところがブルーオーシャン
  5. 確からしいテコを発見する能力

面白かったフレーズ

  • エジソン死の谷で死ぬ」
  • 「言葉を疑え」
  • 「おじいさん(☓おじさん)にモテろ」
  • 「未来からお金・人・労働力を持ってくる*1
  • 「たしからしいテコを発見する能力」


講演は,①Computational Diversityの話,②脱近代の話,③中高生に伝えたいこと,④ロールモデル不在の時代を生きる(ワークライフバランスだったかな…汗),的な4つのテーマで話されていました。所定の時間内には2つしか終わっていませんでした。エモい。*2

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この図,スタートアップの企業がどう発展していくか,という図なんだけど,最初はお金がかかる一方で誰も買ってくれないから,Valley of Death(死の谷)と呼ばれるものが存在する。エジソンは,最後を見据えて製品を放とうとする(たとえば1人1台映像再生装置をもつ!*3とか電気自動車だ!*4とか電流は直流だ!*5とか)から,大体死の谷で死ぬ,というフレーズは面白かった。笑
最初はこの図が,エジソントークの締めなのかなと思っていたけど,ちゃんと最後につながっててびっくりした。




その後は脱近代の話。なんで制服着てるの?という問いを呼び水に,近代の,というか今の世の中は,人が,人の守れるルールをつくって統治していると看破。

めちゃ脱線。書きながら思ったけど, "government of the people, by the people, for the people"って,まさにそういうことだよね。人が,人を,人のために統治している。じゃあ「魔法の世紀」には,"government of the things (including human beings), by the magical computation, for the people"とかになるのかな。エモい。*6


と思ったらご本人に大正解いただきましたありがとうございます。笑


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たとえばインドの様子。車はクラクションを鳴らし続けなくては存在を認知してもらえず,危ない。これでは効率的な輸送はできない。だから近代の人は,「車道に飛び出したら罰する」というルールをつくったり,ガードレールを立てたりした。でも,これって無人の自動運転が完成したら,人が自由に動いて,その合間を60km/時で車がビュンビュン走る未来を想定してもいいよね。

そういう中での学校教育,どうなっていくのだろうね。前述のURLからみられる講演録の中では,ネット使えない状況が想定しづらくなるにつれて,ググっちゃいけない中で試験することの意味ってなんなの?というのを考えなくちゃいけないよね,という話がされていた。
自分としては,ググるためにも知識が必要だと思うから,ググれば知識が要らなくなる,とはまったく思わないけど,でもたしかにGoogle翻訳がもっともっと精度が上がったとして,さて英語の先生の役割は?なんてのを考えさせられてしまった。

このパート最後のメッセージは,「言葉を疑え」。これって普通なら,批判的思考で人の言葉を解釈していけ,みたいなところだと思うんだけど,さすが落合さん,そういう話じゃなかった。そもそもこの日本語という共通ツールが成立したのはここ100年ちょいの話で,この日本語という言語の構造自体に「近代」がしみついている可能性がある。この枠組みを見直す必要があるのでは,ということだった。最近読んだ『あなたの人生の物語』からも似たようなメッセージが(勝手に)読み取れる。
そうそう,『あなたの人生の物語』で言えば,これを原作に「メッセージ」という映画が最近公開されて,それの感想を落合さんがweb雑誌にあげている。
落合、猪瀬、前嶋、3人のプロピッカーが読み解く、映画『メッセージ』の衝撃と感動の正体

今、地球に異星人がやってきて、僕が「なんとか会話してください」と依頼されたら、きっと、ありったけの言語をディスプレイに映して彼らの反応を見る。さらに、できるだけたくさん言葉を印させて、ディープラーニングもしくは、数が少なければ構文解析で解析しようとするでしょう。

いやはや,かっこいい。自分は言語が好きだから,主人公のルイーズ的な手法の方にひかれるけど。笑




中高生に伝えたいこと。おじいさんにモテろ。どういうことか。一部のおじいさんは,戦前戦後でガラッと教育が変わって*7,そういうパラダイムシフトを経験した人の中には,変化に対して柔軟な人がいる。一方でスーツにネクタイじゃないからダメ!という人もいるが,まあそういう人は置いておいて。社会の最前線に立っているおじいさんの中にはそうした変化に柔軟な人がいるから,肩肘張らずに話をしてみろ,と。理解してくれるかも。支援してくれるかも。

そこでさっきの図(の一部)が再び登場する。
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Valley of Deathの終わる点を支点と考えて,その前後の赤い線をてこと見る。
そうすれば,死の谷の中の負債と,その後の収益とを,時間×お金のてことして捉えることができるだろう。
つまり我々は,時間をお金で買うことができるはずだ*8
そして収益のビジョンをはっきり示せれば,きっと投資してくれる人が現れる。金銭的投資かもしれないし,人的投資かもしれない。
うーん,やっぱりこの辺の話は自分がまだしっかり理解していないんだろうな。多分単にビジネスとしての収益性の話をしているだけじゃない気がするんだよな。お金かけて時間かけてちまちまやらなくちゃいけないところを,てこの先を示して支援してもらって最速で実装していこう,という話なんだと思う。そう,実装ってキーワードっぽい。

「やるべきこと」と「やりたいこと」を切り分ける必要がある。前者は,たとえば「これからはどう考えても自動運転来るよね」「これからはどう考えてもスマホの時代じゃないよね」という,未来の社会像の話。まずはここが見えることが大事。上の図でいう「たしからしいテコ」もそうだと思う。落合さんは,筑波大学入学時に,初音ミクとかを含めて,最新テクノロジーについて個人的にサーベイして,見えてきたものがあるらしい。


たとえば↑は落合さんの描く未来像の一つだけど,こういうものが「みえている」ならば,テクノロジー分野に行こうかなと自分でも思う気がする。はてさて,自分は教育に関して,こういう画が「みえている」んだろうか。





最後にワークライフバランスについて。ワークアズライフ。


落合さんも仕事をしているという某D社の話から,時間で仕事を区切ることのナンセンスさについて。
近代はタイムマネジメントだったが,魔法の世紀はストレスマネジメントだろう,と。
これは自分的には非常なパラダイム・シフトだった。「いくら定時に帰っても,1日3時間くらい拷問うけたら死にますよね」ワハハ*9。もちろん時間とストレス量が一般的に相関があるから,時間で規制をかけるのは妥当かもしれないが,本質はそこではない。こういう「仕方ないからこうするけど本質はそこじゃない」という感覚はとっても大事に思っていて,だんだんそれが「こうしているからこれが本質なんだろう」という心持ちに傾く。多分これは,エモくない*10




そして,以下質疑応答。よい質問,よい応答だったなあ…!!

Q. 高3で,これから受験勉強に向かうが,勉強のみに100%賭けるつもりはない。他に何をすればいいか,どう臨めばいいか。
A. 100%賭けるのがいい。ゲーム的に捉える。たまたまこの社会が受験で合否が決まる世界なんだ,くらいの感覚。別の社会ではサッカーで合否が決まるかもしれない。そしたら仕方ないからサッカーやるか,的な。人生において目的を達成するために必要な色々の関門を,ゲームと捉えてガガッとクリアしていく感覚を養っておくとよい。その他,2つの意味で重要。1つ目は,このゲームはなかなか楽しいということ。100%賭けて,時にはチートを探しながら,全力で楽しむが吉。2つ目は,ゲームと人格を引き離す訓練。ゲームクリアに失敗したからと言ってあなたの価値が変わるわけではない。

Q. 英語やらなくてもやっていけるかなと思うんですが,どうでしょう。
A. 英語やらなくてやっていけるかいけないかと言われたら,やっていけると思う。が,全力では推せない。たとえば自分は周囲と議論する時全然わからないなーと思って,講演者の講演録(英語)を写真に取って,それをGoogle翻訳にかけて変換して日本語でインプットしてから議論に参加したらスムーズだった,などということがあった。その時にそのGoogle翻訳が正しいかを判断するくらいの英語力は必要だろう。
→英語の先生としての自分(の存在意義)を自問自答しなくちゃいけないよね。なかなか立ち止まって考える時間がないのだけれど,今,多分そういうチャンス。

Q. 落合さんのように,たしからしいテコに全賭けできる人もいると思うが,躊躇してしまう人もいると思う。えいやと乗っかるためには,どうしたらいいか。
A. 肩の力を抜くことだと思います*11

Q. 自動車という未知のものを発明する段階ではガガッと事が前に進んだが,その後一時停滞した。また自動運転などで盛り上がる雰囲気がある。そこで,落合さんの言う「魔法の世紀」は,きっと今世紀中にガガッと前進するのだろうが,その後停滞すると考えるか。停滞するなら,それを超克するのは別の何かか。それは何か。
A. computational innovation(不正確かも。デジタルネイチャーへ近づく道,的な意味と理解した。)は今後2,500年続くと予想する専門家もいる。自分もそっち側で,あらゆるものがデジタルになった状態,その先をまだ想像できない。

聞き終わった後,同じく聞いた同僚の先生や生徒らと,ニヤニヤしながら話していた。あーいいもん聞いた!

*1:尾田栄一郎の傑作短編集『WANTED!』の「神から未来のプレゼント」ってタイトルを思い出した。

*2:いまいちこの語の使い方が分からない。笑

*3:プロジェクターに惨敗。ただ,今はそうなってるよね!

*4:フォードにコストがかかりすぎるからと止められたらしい。でも,今そうなりつつあるよね!

*5:これはわからんかった。もっと科学を学びたい。

*6:相変わらず,使い方は分からない。笑

*7:これなんか違う気がするな。戦前戦後だとさすがにおじいさん過ぎる気がする。。

*8:お金が倍になれば,かかる時間半分で何かを開発できたりするだろう,ということかなあ。

*9:笑い事ではない

*10:だんだん自分の中でエモの使い方が固まってきた。それが一般的な使い方かは分からないけど。笑

*11:この後も少し話されていたけど,この回答が衝撃的すぎて,あまり後を覚えていないw