さんだーさんだ!(ブログ版)

旧「◯◯な英語教員に、おれはなる!!!!」 - 大学院を終え、2015年度より中高英語教員になりました。

教育的なサッカー漫画の話

最近ハマっているサッカー漫画のご紹介。

ANGEL VOICE 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ANGEL VOICE 1 (少年チャンピオン・コミックス)


あらすじ:別々の中学で喧嘩の強さで名を馳せた「最強の4人」が同じ高校に。その学校「市立蘭山高校」は、サッカー部が非常に荒れておりサッカーなどやってない状況だったが、すったもんだの果てにサッカー部が健全化し、その「最強の4人」全員がサッカー部に入部。さらには元Jリーガー候補であり優秀な指導者の黒木や他の生徒の才能にも恵まれ、全国三制覇をしている市立船橋を倒すことを目標に、「市蘭」の挑戦が始まるのだった!


絵はそこまでうまくない。また、驚いた時の描写が単調(毎回「普通の顔or笑顔」→「驚いてのけぞる」で表現)など、作画としてはそこまで上ではないかもしれないが、話の構成がピカ一。

  • サッカーについてかなり詳しい描写がある。特に選手目線の描写が多く、作者が経験者なのか、綿密に取材しているのか。
  • 泣ける。今週号は立ち読みで泣いた(不審
  • 青春


ザ・少年漫画と言ってもいいのではないか、と思ってはいたけど、さらにこの漫画には「人が成長する瞬間」とでもいうものが詰まっていることに気づいた。ちょこちょこつまみ食い的にご紹介。今日は、さっきBO0KOFFで買ってきた15巻から。


強豪校を倒すにはサイドチェンジが必須と知った主人公たち。サイドチェンジが来るとわかってても止められないくらいのスピードで実行できるように部活で練習するが…

生徒「こっち!!……」
生徒「遅えぞ!!もっと早く回せねえのか!?」
二宮(生徒)「ちっ…… 出せねえよっ!!」
(見ている先生)「サイドチェンジって……やっぱり難しいんですね」
黒木(顧問)「一週間やそこら練習した程度では結果は出ません」
成田(生徒)「(くっそ〜〜〜〜)」
山守(生徒)「(何をすべきかはわかっているのに……)」
二宮(生徒)「(技術が追いついてねえ)」
(ト書き)1人1人がどんな技術が必要かを理解できていた 黒木はこの試合をスキルアップの好機と捉え 朝練でしかやっていなかった技術練習を午後の練習にも組み込むようになる それによって約一月半の間に―――……期末テストは散々だったが 個人の技術は目に見えて向上した
(pp.171-173)

この顧問の黒木という人が類稀なる指導者で、絶妙なタイミングで必要な助けを与える。
自分で自分の限界に気づいて、本当に必要としていると自覚している時、技術の習得は速くなるんだろう。


彼の哲学については8巻に記述がある。彼は前任校で、大会での成果を急ぐあまり、勝つための汚い手段を教えてばかりいた。その教え子の卒業のシーン。

生徒「先生とサッカーができて楽しかったよ」
黒木「(驚いて)う…嘘をつくな」
黒木「(サッカーが楽しい……? 本当にそう思ったのか? サッカーの楽しさもーーー サッカーのすばらしさもーーー オレはお前たちに何ひとつ教えていないのに……?)」
生徒「ああ…… 嘘だよ 全然楽しくはなかった でもーーーオレたちを見捨てなかったの先生だけだから みんなで考えたんだよ どう言ったら先生に 1番喜んでもらえるだろうかって」
黒木「(泣きながら)スマン!!」
黒木「(その時 気づいたんだ 自分のやってきたことのバカさ加減に)スマン……スマン……!!」
生徒「泣くなよ オレたちにこんだけ気を遣わせただけでも 名誉に感じて欲しいくらいだぜ」
生徒「残ってる西口たち……後輩たちには………」
生徒「もっと楽しいサッカーを教えてやってくれよ」
黒木「強いチームを作るより まずーーー誰でもサッカーを楽しめる場を作ろうと思った 基礎から教え直したよ そうしたらな……… よく見てるとわかるんだ ただつらいだけの練習から サッカーを楽しいと感じるようになる瞬間が」
黒木「翌年度正式な部に戻ったサッカー部は さらに1年後ベスト8入りを果たした 結果に対する賞賛の声より 生徒が生き生きとプレイしている姿を見ている方がはるかにうれしいということもわかった」
黒木「市蘭でも同じだよ いずれ卒業していくあいつらにーーー サッカーは楽しいーーーサッカーは楽しかったと言われたら それに勝る名誉はないと思う」
(pp.174-180)

漫画の構成としてここで注目すべきは、「残ってる西口たち……後輩たちには………」というセリフ。
「残ってる後輩たち」ではきっとリアリティがない。西口がきっと次のキャプテンとかなんだろうな、と少しだけ物語を感じさせる(もちろんそれだけだとよくわからないから「後輩たち」と言う言葉を足したんだろうけど)。
こういう細かいところのリアリティも追求されていて非常に素晴らしい。


また以上のような黒木の哲学が顕著に現れているのは例えば17巻。ボールを持ちすぎていてリズムが作れていない場面。

関根(GKコーチ)「あいつらもバカじゃない ひと言言ってやれば気づくじゃろう ボールを"持つな" ―という指示を出してやれ」
黒木「出せませんよ」
関根「……!? なんじゃとおぉぉ!!」
黒木「だって……ボールをキープするのって楽しいじゃないですか」
関根「(な……なにを言うとるんじゃ?)」
(中略)
黒木「彼らには 廃部か存続かという状況の中で窮屈なサッカーをさせてきました」
関根「それで……サッカーの楽しさを味わわせてやりたいと言うんじゃな?」
黒木「それに…… 今持っている技術に限界を感じれば更にそれに磨きをかけるか新しい技術を身に付けなければなりません 楽しさを知っているということがその原動力になるんじゃないでしょうか」
(pp.96-106)

黒木の他にも

  • 市蘭GK所沢が、その才能からクラブチームに誘われても部活に残るくだり
  • 「市蘭が市立船橋という強豪から1点を取って喜ぶ」という構図が、しばらくしてから「弱小校が市蘭から1点を取って喜ぶ」という姿を見て、市蘭部員が、自身が強豪校の仲間入りしていたことに気づくシーン
  • 犬猿の仲の尾上ー成田間のキラーパス
  • 急成長する市蘭部員の中で落ちこぼれていく広能の焦りと快復
  • 必要不可欠なマネージャー、マイの重病とそれを巡る市蘭部員の決意

などなど、本当にいくつもいくつも成長の物語が散りばめられていて、現在もチャンピオンに連載中。今読むべきサッカー漫画だと思います!
(本当は今日は「英語教育における質的研究の理論と実践」なんていう講演に行ってきたしその後他大の院生の方とお話したりで色々思うところがあったけど、なんとなくまだまとまってない話だから後日)

広告を非表示にする