さんだーさんだ!(ブログ版)

2015年度より中高英語教員になりました。2020年度開校の幼小中混在校で働いています。

『ことばの教育を問いなおすー国語・英語の現在と未来』読了

ことばの教育を問いなおす (ちくま新書)

ことばの教育を問いなおす (ちくま新書)

読みました。
mochisava.blogspot.com
こちらの記事を読んだことがきっかけ。

苅谷夏子さんによる第3章「いきいきとした教室へ」が特に印象的だった。
大村はまの実践では、いきいきとしたことばを大切にしていたというところから、博物館の話。自分が飼っているフクロウと、剥製のフクロウを比較しての話。ちょっと長いけど写してみようか。

剥製はもう圧倒的に、生きていない。生気がない。当たり前のことですが、それは実に重大なことだと思えました。(中略)ことばというものの姿にも、このくらいの差はあります。
 大村は、いきいきとした表情を持ち、人の暮らしの一片を見事に表すことばのあり方を子どもの前に示そうとし続けました。「ことばって面白い」と本心から思わない子どもには、教えても教えても本当には力にならない、と、大村は自分自身の経験からもわかっていました。だから四六時中、身の回りのあらゆる言語事象に目をくばり、生気のあることばの現場を捉えようと網を張り続けていました。勉強なんだから退屈でもがまんしなさい、と言わず、活きのいい魅力的な学習材を用意することが、大村教室の力となっていました。
 ただし、いったん関心が確固たるものになれば、剥製も、一見無表情に見えたことばも、ちゃんと興味深い対象となり得る、というのは面白いことです。そうなれば博物館は魅惑のワンダーランドですし、辞書も愛読書たり得ます。鳥好きは、落ちていた羽根一枚でも愛をもって眺め、大事そうに手帳にはさんだりします。ことば好きは、たとえば古代エジプトヒエログリフさえ、愛着の対象とすることでしょう。そうしたことから言えば、「いきいきとしたことば」というのは、関心や基礎的な態度をまず樹立するための条件ということになるでしょう。

特に英語自体に興味が強い教員である自分は、自身の「博物館好き」を自覚した上で、はてさてどうしよう、という感じ。子どもの興味関心を最重要視するとはいえ、自分が英語自体を教えたくなるタイミングも出そうだから、副業で普通に個別指導とかやろうとかなとも考え中。笑

同じ章からもう一つ。

 大村は、いきいきと学ぼうとする子どもを切望していましたが、本人がまずその先頭をきって、誰よりもいきいきと学び、考え、研究する人でした。(中略)
 それができたのは、大村自身がいつも新鮮な課題に取り組んでいたからです。実際、教員生活の後半三〇年ほどの間、同じ単元学習を二度と繰り返しませんでした。どんなに成功した取り組みも、繰り返さなかった。新鮮さを、本気になって大事にしていたのです。取り組みが新鮮であれば、とくに繕わなくても、ことさら演じなくても、いきいきとした教師でいられたからです。本心からの興味をもって、その課題に生徒といっしょになって向かっていくことができたからです。もちろん、新鮮な取り組みが子どもたちを引きつけたことは言うまでもあありません。

 プロジェクトを中心に進めていくことを考えている学校としては、とても興味深い話。プロジェクト中心の学校をいくつか見に行ったけれど、石窯があるところが複数あった。が、いずれも埃をかぶっている感じ。一年目は盛り上がるけど、つくられたそれは継続的に使われていくのかというと、わりと疑問かもしれない。
 もう一つは、大村はまの実践をまとめる意味ってなんだろう、ってこと。彼女の単元学習の完璧な指導案があったとしても、それをコピペして何ができるんだろう。彼女のこの徹底を、労無くしてもらってしまうことなぞ到底できない。子どもを見とるスキルが卓越していたことも含め、模倣を拒む感じがものすごい。「てびき」と言って、この課題にあの子(たち)はどう反応するだろうというのをなるべく細かく考えてリハーサル?していたらしい。これは現任校のスタッフも昔やっていたようだけど、自分はしばらくできる気はしない。汗

 自分が生の英語を教材化しようとしていたのも、結局は自分がその新鮮さを楽しみたかったんだろうと思うと、ちょっとだけ共通点を感じられたりはする。とはいえ現代を生き、家庭をもち、家庭人としても人生楽しみたい自分としては、それらもろもろの間の「ちょうどいい*1」バランスをみつけるためには、きっと一旦「あふれる*2」ことが必要なんだろうと思うと、ちょっとだけ気は重いけど、まあなんとかしていけるでせう。うーん、ちょっとテーブルの上にこぼれる*3くらいがいいかな。笑

*1:昨日妻と観た「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています」でのキーワードだった。いい映画だった…!!

*2:これまた同映画の榮倉奈々演じるヒロインちえの「ビールはあふれる位が丁度いい」より。

*3:「あふれる」も「こぼれる」も、「溢れる」なんだ。わっかりづら!