さんだーさんだ!(ブログ版)

2015年度より中高英語教員になりました。2020年度開校の幼小中混在校で働いています。

"Boyhood"観てきました

映画を観てきました。”Boyhood”ってやつ。邦題は「6才のボクが、大人になるまで。」です*1。これが非常に面白かった。
テーマとしては,6歳のアメリカ人の男の子が18歳になって大学に入るところまでを描いたものなんだけど,何が異常って,リアルタイムで追っている,ということ。つまり,12年間,毎年撮影したんだって。異常!
映画『6才のボクが、大人になるまで。』
ここにも書いてあるけど,文字通り,人が成長していく。男の子が男になっていく過程がこの上なく克明に描かれている。
ただし,毎年数日間だけ撮影していたということもあってか,過剰に描きすぎることはない。たとえば途中で,主人公のメイソンが転校していった学校のトイレで,いかにもガキ大将みたいな奴とその子分みたいな男の子が,メイソンに突っかかってくるシーンがある。いかにもいじめに発展しそうな場面なんだけど,彼がその後どうなったのか,というかいじめがあったのかどうかさえ,作中では明かされていない。時間の経過はメイソンその他の身長・体型・髪型等をみれば一目瞭然だから,変にメイク等でごまかすことがなくて,「素材の味で勝負してます」って感じ。


印象に残ったシーンをメモっておこう(ネタバレ注意)。

メイソンの母オリヴィアが,18になって家を出て行くメイソンに対してヒステリックに泣き出すシーン。

「私の人生なんなのよ。結婚して,出産して,離婚して。サマンサ(メイソンの姉)を大学にやって,あんたを大学にやって。次のあたしのイベントは何よ。お葬式でしょうね!」
「…気が早いよ。まだ40年くらい生きるんだから」
「…もっと長いと思ってたわ(泣き崩れる)」

オリヴィアは作中で3度の離婚を経験し,最終的には独身である。結局最初の夫とは今でも交流があるが,なんだか彼女は幸せだったんだろうか,と身につまされた。
そして我が身を振り返ると,これはなんだか重い。俺はまだ実家で暮らしているから,僕らが去ったあと,両親は「40年くらい生き」はしないだろう。それを彼らはどう思うんだろう。
そして,いずれ結婚して子育てをするだろう自分は,彼らが巣立った後,どうなるんだろう。やっぱりその時にも楽しめる生涯趣味みたいなのを持たなくちゃな。(凡
あと,若いころのオリヴィアは「〜やりなさい」みたいな指示が多いのに,年取ってくると「お願いだから〜して」「(かわいそうな)私に〜させないで」といった指示が増えてきた印象。これはこれで興味深い。

虚勢の張り合い

15歳の頃,夜友だちとその兄らと酒を飲みながら話すシーン。「お前ゲイかよ」「女を抱いたことあんのかよ」的な会話。
これは自分の中高時代にはなかったなー。こういうのがあったら,今の自分の気質もだいぶ変わっていたのかも,とか想像してみたりする。
ただ同時に,こういう会話,なんというか,女性扱いが上手いことがステイタス,みたいな傾向は,きっとどの国の男子にも共通するものなんだろうなーとは思った。

ラストシーン

メイソンは高校時代の恋に破れ,大学に入った初日,ルームメイトの友だちとその女友だちとピクニックに行く。
隣に座った女の子と意味ありげな視線をやり交わしながら,こんな話をして,やや唐突に映画は終わる。

女の子「なんでみんな『この瞬間をつかめ(“Seize the moment.”)』って言うんだろうね。逆じゃない?。瞬間が私たちを離さないの(“The moment seizes us.”)」
メイソン「そうだね。切れ目なく続いてる。瞬間が僕らを離さない,いつだって『今』だ(“It’s constant. The moment seizes, it’s always right now, you know?”)」


Boyhood - Seize The Moment HD - YouTube

なんだか象徴的ですね―と思いつつ,個人的にはこの感想に共感した。
リアルを台無しにするラスト - ユーザーレビュー - 6才のボクが、大人になるまで。 - 作品 - Yahoo!映画
メイソンは写真の才能がありそうだけど,高校の先生に注意されたように,それが大成するかは分からない。このラストシーンも,彼がこの台詞の似合う男になったかというと,どうでしょうね,って感じ。初対面の女の子に対して,(クスリの影響もあって)いきってみせた場面が,たまたま象徴的なものとなった,と考えるのがいいんじゃないか。

政治

オバマ対マケインの頃,メイソンとサマンサは「オバマ」と書いた札を持って各家を回る。庭にその札を刺させてもらうよう,頼みに行っている。へー!
2人の父(オリヴィアの最初の夫)がオバマ支援者で,最後「そのマケインって書いた札を引っこ抜いてこい」とメイソンに命令する。「怒られるよ」と渋るメイソンに「俺は愛国者だからな」とうそぶく父。
観終わった後,日本じゃありえない光景だね,って一緒に行ったアメリカ人の友だちに言ったら,「あれは本当だよ。というか札に毒塗っておいて,勝手に引っこ抜く人の手が荒れるようにしてるよ」って言われてビビった。そこまでなのか。笑

映画の副産物

アメリカ人の友だちと映画を観に行って,映画の後飯食って帰ったんだけど,なんだか英語が普段よりスムーズに出てきたような気がした。「おっこれは夏休み中の勉強が身を結んでるかな!」と一瞬テンション上がったんだけど,よくよく考えたら,165分の英語のインプットの後だからそりゃそうか〜と。でも,その日はとても楽しかった。笑
“That means a lot to me.”という表現,何度も耳についた。日本語に訳しづらいけど,使えるようになりたい。
あと,大学で教えているオリヴィアが生徒にホームパーティのお知らせをした後,「料理は下手だけどね」って字幕が出てて,”I’m not a good cook.”かなーと思ってたら,”I’m not the greatest cook.”だった。アメーリカ!って感じ。笑

この映画,もう映画館でやることはないかもしれませんが,めちゃくちゃオススメです。

ぜひ!

*1:邦題だともう大人になってる感あるけど,どうでしょうね。笑