さんだーさんだ!(ブログ版)

2015年度より中高英語教員になりました。2020年度開校の幼小中混在校で働いています。

The First Letters(折句 2020/01-02)

(書くことを教える教員は,自分自身書き続けていないと,ということで,同僚同士励まし合いながら書き物をしている。せっかく書いたものなので,一応自分のブログにも公開。)

Rush, just rush,
Up, up and away,
No energy left.


はなされるものか…
しにものぐるいの
れつさいこうび

Lonely nights are
Over.
Vivid memories are
Eternal.


あなたと
いっしょに住むのは先だけど、
すまいは同居を見すえ、
るすを守るっす。

ああなりたい、
こうなりたい、
が、
れつをなしている。


And
Don't forget:
My goal is not being like you.
I want to be your
Rival and
Eat you up in the end.

おそるおそる
そろりそろり
れっとうかん


Future is unclear.
Even now is uncertain.
All you need is
Revive.

優しい声

(書くことを教える教員は,自分自身書き続けていないと,ということで,同僚同士励まし合いながら書き物をしている。せっかく書いたものなので,一応自分のブログにも公開。)

 「ねぇ、知ってる?このユーチューブチャンネル。」
 マサコは保育園に息子を送り届けた帰り道、ママ友にそう話しかけられた。
 「ほら、『うちの子まだひとりでボタンとめられない』ってこないだ愚痴ってたじゃない。最近そういうのを子どもに教えてくれるユーチューバーがいるらしくて、このチャンネルの動画、人気みたいよ。」
 みると、すでに百万回以上も再生されているその動画は、子どもの目を引きそうな派手な色づかいのアニメーションに、優しい声のナレーションがついていて、丁寧にボタンのとめ方が解説されていた。
 その夜、マサコは早速息子にその動画をみせてみた。普段は集中力のない息子だが、この動画にはあっという間にひきこまれた様子で、黙々とボタンどめに取り組んでいた。おかげで晩ご飯の支度もスムーズに済んだマサコは、たまにはこういう動画に頼るのも悪くないわねと、これまでの認識を少しあらためた。
 そのユーチューブチャンネルは、実によくできていた。結局息子は1週間とかからずボタンのとめ方をマスターしたし、それ以外にも、子どもの興味に合ったさまざまな動画がアップロードされていた。歯みがきやトイレも、動画の主が優しく褒めてくれるので、息子はうれしそうに動画をみながら、何度も練習した。
 これまでは、息子が料理に興味を持ったときも、包丁やら火の扱いやら気をつけるべきことが多すぎて、マサコは息子を台所から遠ざけていた。でもいまは違う。「火は危ないです。近づきすぎないようにしましょう」「包丁を持ったら、ここに気をつけましょう」優しい声で危険を教えてもらえるおかげで、息子は一度もケガをしなかった。
 息子の成長のそばに、いつもこのユーチューブチャンネルがあったし、そういう家はますます増えているようだった。小学校の保護者会でも、だれかれともなくこのチャンネルが話題になった。
 「それにしても不思議だよね。この動画、誰がつくっているのかしら。声だけで、顔も出ていないし。」
 「ほんとほんと。こんなに素敵な動画を、こんなにたくさん、しかも無料で公開してくれるなんて。どこで利益を上げるつもりか知らないけど、ありがたいことだわ。」
 息子が中学校に上がっても、動画の効果は健在だった。反抗期になる年頃ではあったけれど、「おうちの人は大事にしましょう」と優しくくり返す動画をそれとなく見せ続けたおかげか、特に反抗期らしい反抗期も迎えなかった。同じころ、全国的に非行や学級崩壊が減ってきたというニュースが報道されたが、マサコは半分本気で、このユーチューブチャンネルのおかげなのではないかと思ったくらいだった。
 いつからかそのチャンネルに新しい動画はアップロードされなくなっていたが、その頃にはすでに子育てには十分すぎるほどの数の動画がアップロードされていたし、なによりマサコの息子も大学に入っていた。ほどなくして息子は無事大学を卒業した。就職後、親元を離れたので息子とやり取りすることもめっきり減ったが、マサコは趣味の手芸サークルに参加し、穏やかな生活を送っていた。
 そこで話題になるのは、もっぱら老後の話。みんな不安があるようで、どの薬がきくとかどの病院がいいとかの健康の話から、選挙が近づくとどの政党が自分たちによさそうとかの政治の話まで。マサコ自身、昔はどこに投票しても変わらないと思っていたものの、この年になると少しでも自分に得になるようにと考えてしまう。まあ、超少子高齢化が進む日本では、若い世代がよほど一致団結しない限り、今の年寄りびいきな与党が敗けることはないのだけど。
 そう思っていつものように与党に投票したマサコが仰天したのは、選挙結果のニュースをみたときだった。最近出てきたある政党が、二十代三十代からの驚異的な支持を受け、それまでの与党を破ったのだ。「今の与党は危ないです。私に投票しましょう」「投票権を持ったら、私に投票しましょう」などと中身のない演説をひたすらにくり返していただけの党に、こんなたくさんの若者が投票するなんて。ニュースでは、新与党党首の所信表明演説がくり返し流されていた。どこかで聞いたことがあるはずのその優しい声を、マサコはもう覚えてはいなかった。

English Book Club200208 "The Visitor" Chapter8

The Visitor: (Jack Reacher 4)

The Visitor: (Jack Reacher 4)

  • 作者:Lee Child
  • 出版社/メーカー: Bantam
  • 発売日: 2001/04/01
  • メディア: ペーパーバック
この本を,近くに住んでいるドイツ人の方とちびりちびり読んでいる。彼女はとても英語のできる人で,色々教えてもらっている。毎回2時間くらいお邪魔するけど,30分くらいは新しい学校のカリキュラムの話なんかをしている。楽しい。
今日はChapter8に入ったのだけど,毎回学んだ表現なんかが流れていってしまわないように,メモしておこう。

The line shuffled forward

シャッフルって日本語からの連想で,混ぜるみたいな意味が中心かと思っていたら,あにはからんや,最初に出てくる意味は「足を引きずって歩く」だった(ウィズダム英和)。すり足でのろのろと列が進んでいる様子。

staking them out

high-stakesなんかで使うことしか知らなかったけど,stake A outで「見張る・張り込ませる」ということらしい。stalkも近い意味かな?みたいなことを言ったら,彼女はstake outは相手に気付かれないようにって感じ,stalkはストーカーの感じで,相手になんらか気づかせることもある,と話していた。
印象に残っているのは,「そっか,stake outは尾行か」と自分が日本語でつぶやいた時に彼女がなにか説明してbecauseと言って,尾行とbecauseで音がかぶったこと。面白いなとなんかニヤニヤしていた。笑

the greatest good for the greatest number

最大多数の最大幸福。utilitarian的だよねというコメントがすぐ彼女から出てきて,教養だなあと。受容語彙ではあるけど,表出語彙にはなってないな。

He looked away, and clenched his teeth to stop himself from smiling. So far, so good.

この文で今日はおしまい。彼がSpecial Forcesというキーワードに相手の注意を向けるように仕向けたのだけど,何が狙いなのかまだわからない。いやはや先が楽しみだ。


実はこの著者は,つい最近引退を表明して,弟に続きを書いてもらうらしい。びっくり。彼女いわく,最新作はあんまり面白くないから良い判断だったのでは,と。ともかく,続きを楽しみに読もう。こういう時間をちゃんと取ろう。

フローと遊び


【ポジティブ心理学】自己啓発本の定番!?ミハイ・チクセントミハイのフローを掘り下げる【動機づけ】
この動画を観た。ミハイ・チクセントミハイの「フロー」という概念について。以下内容を箇条書きに。

  • フローとは「全人的に行為に没入している時の包括的感覚」
  • フローに入る条件
    • 活動を理解している
    • 現実を離れている
    • フィードバックを獲得
    • スキルと難易度の最適なバランスがある
      • よく言われる「スキルと難易度のバランス」はフローの唯一の条件ではない
    • 全能感「俺は何でもできるんだぞ」
    • 活動が本質的。ルーティーンワークではない
    • 自分が世界の中の一部になっているという感覚
    • プロフェッショナルであること(他と比べた優位性)が求められる
  • 創造的な人々に着目した研究
    • 没我の感覚
  • フロー研究の意義
    • 疾病モデル→予防モデルの移行(悪い部分を治すというより,良い部分もより良く。プラスになるような心理学)
    • 動機づけ。欲求論的アプローチに対する情動論的アプローチ
      • 欲求論的アプローチ:内発的な動機が基本的な欲求と仮定して動機づけが行われる。「自分がこういうことがしたい!」というのがそもそもあなたの中にあるよね,というのを前提に置いた上でどうそれを引き出すか考える
      • 情動論的アプローチ:環境と人間の相互作用によって動機づけが生まれる
    • 個人の特性でなく個人と活動の相互作用に着目

この動画を観て,子どもの遊びって「フロー状態」な感じするよなあと思った。以前苫野さんは遊びを「主体的な非日常性への没入」と本質看取していたけど,それとかなり近い気がする。子どもの遊びはしばしば現実を離れるし,全能感や本質性,「自分が世界の一部になっている」みたいな感覚もきっとありそうだ。
プロフェッショナル性みたいなものは子どもの遊びに望むのは難しいだろうけど,一流のプロがフロー状態で事に当たっている時って遊んでるみたいな感覚があるんじゃないかな,違うかな。

さて,学校の中でこんな感覚を感じながら過ごすには?と考えると,やはりまだまだ分からないことは多いよなあ。

インターネットはすのこである。

職場の上司が,村井純さんを紹介していた。日本の計算機科学者。彼がファウンダーのWIDEプロジェクトなるものがあるらしい。
WIDE
[左手に研究、右手に運用。社会基盤を両手で支えます。]とのこと。ふむふむ。

SFC-GC Video Material
これはSFCの「インターネット」という授業の最終回。村井さんにとっても最終講義なのかな。彼のQAが中心に。

なんでこのことをブログ記事に書いたかというと,彼の言葉で面白いなと思うものがあったから。

インターネットは"すのこ"のようなもの

すなわち人間が届かなかったものに届くようにするのがインフラとしてのコンピューターの役割だ,ということ。

「AはBのようなもの」って,国語で習う直喩ってやつで,レトリックの有名な手法。「彼女は天使のようだ」的な。
ほんでこういうのってAとBのわりかし意外な共通点を拾うから有効なわけで,「彼女は天使のようだ」ってのはなんとなく陳腐な感じ。
インターネットをつくった人である村井さんが,インターネットの本質を「ちょっとだけ届く範囲を増やすもの」と捉えているのが面白い。インターネットはもうその重要性を疑う人は誰もいなくて,すのこどころじゃないだろう,というのが直感的に思うことだけど,村井さんが言うから価値が出てくる比喩にも思える。
だからなんというか,レトリックをどう尽くすかということより,誰がそれを言うかという方が大事な場合もありそうだよね。
上に紹介した最終講義でも,色々含蓄ある言葉が多かった。お時間ある人はぜひ。

ぺこぱとU理論

ぺこぱが自分の中でブーム。NHKの「笑けずり」の頃から知っていて,この間のM-1決勝,最終決戦進出を見て,そのスタイルの変化とともにこれまでの努力に思いを馳せたりしていた。
その特徴的なツッコミが話題になったけど,友人と話をしていたら「ぺこぱはU理論だよね」という話になっていた。ふむ。そう言われたらそうかなとかうなずいていたけど,ちゃんと分かってなかったから,自分なりに調べてみた*1

U理論とは

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画像はU理論とは | U理論の普及と実践の機会を - 【PICJ】プレゼンシングインスティチュートコミュニティージャパンより転載。


詳しくは参考URL参照(u理論入門編!u理論の基本「7つプロセス」と初心者向け書籍のご紹介 | ノマドジャーナル)だけど,このページによるとU理論とは「リーダーシップの能力開発や、イノベーションを起こすための思考プロセスを明らかにした理論」とのこと。そこには以下の7つのステップがある。

1. ダウンローディング

  • 過去の経験によって培われた枠組み(≒思い込み)の内側で自分の思考・意見が再現されている状態。

2. 観る(Seeing)

  • 過去の枠組みによる判断・雑念を保留して,新たな視点に立って目の前の事象を観る。

3. 感じ取る

  • 過去の枠組みを崩し,枠組みを超えた側から自分の状況を見えている状態。過去の解釈に依らないため混乱が起きるかもしれないが,盲点であった事象に気づくこともある。

4. プレゼンシング

  • 「源(=自分の内側から現れる世界)」につながる。「私」とは何者か,私の「成すこと」は何か,といった問いを考える。

5. 結晶化

  • これまでの固定観念を取り除き,掘り下げた考えを具体化する。

6. プロトタイピング

  • 試行錯誤を行い,アイデアやインスピレーションに形を与える。

7. パフォーミング

  • 上記のステップを経て得られた新しいアイデアを実践(習慣化・組織伝播)する。

正直,4. プレゼンシングはよく分からない。多分ここが一番大事なんだろうけど。
U理論とは | U理論の普及と実践の機会を - 【PICJ】プレゼンシングインスティチュートコミュニティージャパン
↑のページによると,「『ダウンローディング』『観る(Seeing)』『感じ取る(Sensing)』までが個人の内側の体験にとどまるのに対して、プレゼンシングは個人という枠を超えて、まるで共振するかのように他の人に響くものがあ」るとのこと。ふむ。


ぺこぱの漫才

シュウペイ(以下シ);どーもーぺこぱのシュウペイでーす。お願いしまーす。(と松蔭寺の前に立ってポーズ)
松陰寺太勇(以下松);いやかぶってる!なら俺がよければいい。(とシュウペイの横に移動)

という感じで,シュウペイのボケに松蔭寺が一度突っ込んでから,新しい解釈を提示するという構成。

シ;ブーン(とタクシーを運転)
松;へいタクシー!(と手を挙げる)
シ;ブーン…ドーン!(と車で松蔭寺に突っ込む)
松;いやいってぇな!どこ見て運転してんだよ!って言えてる時点で無事でよかった。そうだろ。無事であることが何より大切なんだ。

書いていて思ったのは,ボケというものは基本的に,1. ダウンローディングと2. 観るのステップかもな。当然タクシーは自分にぶつかってこないという「過去の枠組みからの判断」が,タクシーが自分にぶつかるという事象を「観る」ことで逆に可視化される。
「いやいってぇな!」までだと一般的なツッコミで,「3. 感じ取る」まではいっていない。「車にぶつかられたら痛い」という,これまた過去の経験からの当然の判断が提示されるだけである。だがここで松蔭寺は「(運転手に文句が)言えてる時点で無事でよかった」と新しい見方を提示する。これは,3. 感じ取るのステップと言えるんじゃないか。

シ;ブーン(とタクシーを運転)
松;へいタクシー!
シ;ブーン…ドーン!(と車で松蔭寺に突っ込む)
松;いや2回もぶつかるっていうことは俺が車道側に立っていたのかもしれない。もう誰かのせいにするのはやめにしよう。

1: タクシーは2回もぶつかってこない
2: 車が2回連続でぶつかってくる
3: 悪いことがくり返されるということは,自分の側にそれをくり返させる要因があるのかもしれない。

シ;スーン(と車が止まる)
松;いやブーンじゃなくてスーンの車が,もう街中にあふれてる。

1: 車はブーンと走る
2: この車はスーンと走る
3: そうやって走る車(電気自動車)はすでに街中に存在する。
※けっこう社会派的なやり取りが多いのもぺこぱの特徴なのかも。U理論的とはあまり言えない。

松;運転手さん,新宿駅までお願いします。
シ;かしこまりました。ちなみになんですけど,新宿駅って,なんですか。
松;いや知らねぇんだったら教えてあげよう。そうだろ。知識は,水だ。独占してはいけない。

1: タクシー運転手は新宿駅を知っているものだ。
2: このタクシー運転手は新宿駅を知らない。
3: 知識を共有する機会になる。

ぺこぱの漫才とU理論

さらに,分かりづらい「4. プレゼンシング」はすでに松蔭寺の中で経験されていると考えると,ぺこぱの漫才自体が,彼(ら)のアイデアを「結晶化」したものと言える。自身の哲学を実践し,日本社会へと伝播させようとする試みなのではないか。じっさい,松蔭寺は「そうだろ。」と観客に同意を求めたり,「もう誰かのせいにするのはやめにしよう。」「知識は,水だ。独占してはいけない。」と自身の教訓を端的にまとめ直したりしている。この教訓めいた感じが,「漫才とはこういうもの」という「過去の経験からの判断」と矛盾するのでおかしさを生んでいる,というのも上手い構造だなあ。

そして興味深いことに,そうした松蔭寺の呼びかけに呼応する流れも出てきている。
見知らぬ人に嫌なことをいわれた母親 斬新な『切り替え方』に「マネしたい!」の声
「ぺこぱ流育児のススメ」など,他の人がぺこぱの考え方に触れ,それを自分の暮らしの中に取り入れようとしている。これは,彼らの漫才が,7. パフォーミングの段階にすでに入っていることの現れではないか。

大学時代に,社会学者の理論を使って社会事象を論じるというレポートがあったけど,これくらい気を抜いて適当にできたら,ちょっと楽しいかもしれない。笑

*1:半分以上冗談記事ですw

ただしさからたしからしさへ〜『みちこさん英語をやりなおす』再読

みちこさん英語をやりなおす (am・is・areでつまずいたあなたへ)

みちこさん英語をやりなおす (am・is・areでつまずいたあなたへ)

  • 作者:益田ミリ
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2014/01/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
こちらの本を4年ぶりに再読した。かなり感じ方が変わっていたので面白かった。ちょっと具体的に紹介。

一番印象に残った箇所(pp.125-129)を,以下抜粋。
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この部分を読んで感じたことは,4年前とまるっきり違うように思う。

これ多分英語的に見ればツッコミどころがあって,それは "0 year old" という言い方はしないということ。
Google Ngram Viewerをみても分かるように,"0 year old"より,"0 years old"が使われているし,さらに1際未満の子どもの場合は, "◯ months old" と月齢で呼び表す言い方のが普通らしい。

それで当時の自分は,多分そういう「(英語としての)ただしさ」をとても重視していたように思う。もちろんそれは今でも大切だと思っていて,学習者に間違った知識を伝えたくはないと思っている。

ただ同時に,学習者自身にとっての「たしからしさ」も,「ただしさ」と同じかそれ以上に大切だと,今は昔に比べてかなり強く思っている。だからこそ,ここでみちこさんの言う「『わかる』ってすごくうれしいこと」「わたし,もう絶対年齢のあとに『s』付けるの忘れないと思う」という気づきは尊いと思うし,娘のまさみの言う「赤ちゃんじゃなくなったら『s』がいるんでしょ」というみずみずしい気づきには,ある種の畏敬の念を覚える。

「主語を学習者に」ということを,軽井沢風越学園のスタッフはたびたび口にする。そのたびに自分は,無意識に「ただしさ」の方を主語にしていた自分や,学習者にとっての「たしからしさ」を蔑ろにしていた自分を反省する。
みちこさんが言った「先生 簡単かどうかは先生じゃなくてわたしが決めることだと思います(p.27)」という言葉は忘れずにいたいし,それを勇気を出して言ったみちこさんには敬意を払いたい。

ゆくゆくは,ただしさもたしからしさも大切にできる教員になりたい。でもおそらく自分に当面必要なのは,学び手にとってのたしからしさを徹底的に大切にできる力・見方・あり方だとも感じている。今いる場所はそれを伸ばすのにこの上ない環境だと思うから,開校までも,開校してからも,強めに意識してふんばってみたいところだ。