ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか? 生命科学のテクノロジーによって生まれうる未来
- 作者: 高橋祥子
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2017/09/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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非常に面白かった。自分が期待したゲノム解析の詳しい話はそこまでなかったけれど,世間の人々を啓蒙するねらいで書かれた本みたい。
かつてヒトゲノムの解析には10年単位の時間と数千億円単位のお金がかかったけど,今だったら10万円くらいでできる。いつそうなるかはわからないけど,方向としてはこっちに行くよね,というのはわかる*1。だったら,それを見越して準備を始めないと!というのが通底する主張だった。
どうしてもテクノロジーの進歩の速度は速く,社会がそれを受け入れる速度は相対的に遅い。筆者が大学での研究だけでなく株式会社ジーンクエストを立ち上げたのは,もちろんその遅さに対するもどかしさのあらわれだろうけど,それでもそれを完全にネガティブにとらえて「社会は分かってない!もっと変われ!」と迫るのではなく,賛否両論あるテクノロジーだからこそ社会を変えうるのだというポジティブな立場で書かれていて,好感触でした。
ジーンクエストがやろうとしていることは,「社会」の立場からすると,今の私たちがどう行動するのがよいのかという診断に(ごく限定的な部分にせよ)使えるのだと思うけど,同時に「テクノロジー」の側からすると,蓄積していったデータが今後さらなる研究に活かせるということで,うまいこと考えてるなあと。
未来を構想して社会を変えようとしていく動きが色々な分野で起こっていて,楽しいなあと思う反面,ふと立ち止まって我が身を振り返ると,モニョモニョ,という感じ。
来年を構想して授業を変えよう。Start smallなのは,まあ,仕方ないよね。笑
*1:まずこれがわかるようになるのが大変だと思うのだけど。。