読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

さんだーさんだ!(ブログ版)

旧「◯◯な英語教員に、おれはなる!!!!」 - 大学院を終え、2015年度より中高英語教員になりました。

塾の煽りと謎の怒り

教育 英語教育 英語

現在期末試験のまっただ中です。監督をしつつ机の中に入ってた塾の広告を見る。
…それでじわじわとなんだかムカついてきてしまったのでこの日記を書いているわけです。

As there are persons in the world of so mean and abject a spirit, that they rather choose to owe their subsistence to the charity of others, than by industry to acquire some property of their own; so there are many more who may be called mere beggars with regard to opinions.

この英文の横には,「1年間の学習を経て,辞書なしに次のような英文を読みこなすことが可能になります」だってさ。

いやいやいや,さすがに難しすぎるでしょ。abjectとか。
試しにweblio辞書でこの単語を引いてみると,「英検:1級以上合格に覚えておきたい単語」とある。てことはこの塾に通った高1生は,英検1級合格レベルの英語力なの?多分それなら残り2年通う必要なくない?笑 もちろん,mean and abjectとつながっているから形容詞で,meanと同じような意味,というテクニカルな読みはできると思うけど,わざわざ「辞書なしに」って書いてるんだから,そういうテクニックではなく完璧な単語力を,という雰囲気を感じる。

あとそもそも,本当にこんな英文が入試で出てるのかも謎。この塾の方針として,「ただ,解ければ良いというのではな」いとか広告には謳っているから,きっと「ペラペラ話せる英語力(だけ)ではなく,骨太の読解もこなせる英語力」みたいなことなんだろうとは思うけど。
誰かのツイートにもあったけど,

本当に謎なんだよな。以下詳しく書いていくけど,個人的にはこの英文をこの切り取り方で提示するのは「ズル」で,それで生徒の危機感を煽ってるようなところに生徒が通って,どういう指導するかは分からないけど宿題やらなんやらで縛られて*1,結果として学校での授業をはじめとした諸々が疎かになるとしたら。

そうなんだよな。やっとここに来て,なんでこれを読んだ自分がムカムカきたか分かってきた。自分が負けているからなんだよな。結局のところ,この提示はズルいとかなんだとか俺が言ったところで,「へー」とか思いながらいろんな塾に通って,真に受けて,授業中に内職する生徒が一定数いる。そしてそれは,端的に俺の授業力の問題なんだろうと思う*2。悔しく,恥ずかしい話だ。


てことで,「グダグダ言ってるけど,この英文読めないのかよww」と思われるのも癪なので,以下一応解釈。

【訳】
世の中には非常に卑しい(mean),ひどくザンネンな(abject)根性の持ち主がいて,自分の生活を他人からの施しで賄おうと決めてしまって,自助努力でもって(by industry)何がしかの財産を自分のものにしようとは考えない人がいる。なので,考え(opinions)に関してはもっと多くの人が,まったくもって乞食と呼ばれうる存在なのである。

【解釈】
in the world of ~とは取らない,というのが最初の壁だろう。”persons of so mean and abject a spirit”というかたまりに,”in the world: この世界の中には”が挿入されている。 “so mean and abject a spirit“は,語順注意。so/as/how/too + 形容詞 + a/an + 名詞ってやつですね。(普通はa/an + 形容詞 + 名詞ですね,一応。)
そして,このsoと後ろのthatがつながって, I love her so much that I’m willing to give her all I have.みたいな感じで,どれくらい卑しいか,がthat以下に示される。
このthatの中,つまりどれくらい卑しくて,ザンネンかというと,の中に,”rather A than B”が入っている。「BじゃなくてAしちゃう」って感じね。それでAは “choose to owe their subsistence to the charity of others”で,Bは “by industry to acquire some property of their own”。
Aの中をみると,choose to doでdoすることを選ぶ。これはまあいいか。
あとは”owe B to A”で,「AにBをもらっている」。「自分の生活(に必要な物資: their subsistence)を,他者の施し(charity of others)でまかなっている」と。
続いてB。by industryが,industryが多義語だから厄介ね。ここは “industrious: 勤勉な”,あたりからの連想で,industryを勤勉,と捉えましょう。文脈的に「産業」ではおかしいですね。
勤勉さでもって何をするかというと,to acquire some property of their own。つまり,their own property(自分の財産)を,some,つまりある程度の量,acquire ≒ getする,と。真面目に働いてお金を稼ぐ,的な意味だと思います。

はー長かった。この辺りで,では一回第一文を読んでみましょう。セミコロン;の前までね。最初のAsは理由ですかね。たくさんいるから,だから,とセミコロンの後のsoにつながっていく。

ではso there are many more who may be called mere beggars with regard to opinionsですね。
many more は one more thing, two more things, many more thingsと考えるとわかりやすいでしょう。1つ多い,2つ多い,たくさん多い,と。つまり前段で述べた,人から施しをもらって生活する人の数と,これから説明する「知的乞食」の数を比べると,後者のがはるかに多いよ,ということですね。
many more “people”くらいの単語を頭の中で補ってあげて,それがどんな人かというと,mere beggarsと呼ばれうる存在なんですね。mere beggars。完全なる乞食。まったくもって乞食。ただの乞食。
with regard to Aは,「Aに関して」。重要な熟語ですねー。で,Aはopinions,すなわち考えとか,思想,思考。
複雑に入り組んでいましたが,前段は物理的な乞食,後半は精神的な乞食,で,後者のが多い,という文章でした。チャンチャン。



…ってこれもね。あたかも初読からスラスラ解釈していったかのように書いたけど,当然そんなわけはなくて,ここまでスッキリわかったように見せられるのも,前後の文章を自分で確認したからなわけですよ。(後述)
それを見せないでおいてこの切れ端を示して,「これが読めますか?うちに来れば読めるようになりますよ?」って方法は,やっぱりunfairに映る。

それで,以下【愚痴】*3
初読では,普通に「乞食dis」みたいな文章かと思って気分が悪かった。ノブリス・オブリージュなんて言うつもりはないけど,特にこの塾が対象にしているような学校の生徒に,社会的弱者に対する偏見を助長させる文を読ませてどうするの?と。

それは個人的な考えにすぎるとしても,この切り取り方はどうなの?? ”so”って言われても「なんで?」って感じなんですけど。

ググってみたらどうやら,トマス・リード(Thomas Reid)という哲学者の文章らしい。 "Essays on the powers of the human mind: An essay on quantity. An analysis of Aristotl's logic"だって。
Essays on the powers of the human mind: An essay on quantity. An analysis of ... - Thomas Reid - Google ブックス

原文には,最後のopinionsの前にtheirが入っている。こっちのが分かりやすいかな*4。直前直後の段落を引用してみる。

【この章のテーマ】
人の判断を誤らせるもの,としてidols tribes, idol spicus, idol for, idol theatreというのが挙げられている。これはフランシス・ベーコンの術語で,「実在の正しい把握を妨げ,無知と偏見の原因となる要因」なんだって。そのうちの一つ,idol tribesの説明の中で,

1. First, Men are prone to be led too much by authority in their opinions.

とある。 be prone to do: doする傾向がある,ってんで,「自身の考えに関しては,権威(authority)に導かれてしまいがちである。」「自分の考えを形作る際に,権威を盲信しすぎることがしばしばある。」的な感じか。
これは必要でしょ!今回の部分を読解するにあたって,上に挙げたテーマに触れずにしれっとあの部分だけ読ませるのは意味がわからなくなっちゃうよ!*5

【直前】

The love of truth is natural to man, and strong in every well-disposed mind. But it may be overborne by party-zeal, by vanity, by the desire of victory, or even by laziness. When it is superior to these, it is a manly virtue, and requires the exercise of industry, fortitude, self-denial, candour, and openness to conviction.

【直前:解釈】
真実を愛するのは人にとって自然なことであり,全てのよき精神の中に強く根付いている。しかし,この真実への愛は,華やかさを好む心*6や,うぬぼれ,虚栄心,時には怠惰心によってくじけてしまうことがある。これらに打ち勝って初めて,真実への愛は人の*7美徳となるのだ。真実の愛には,勤勉・忍耐・禁欲・率直さ・信念に対する寛容を駆使することが必要である。


【直後(引用部と同じ段落の続き)】

Through laziness and indifference about truth, they leave to others the drudgery of digging for this commodity: they can have enough at second hand to serve their occasions. Their concern is not to know what is true, but what is said and thought on such subjects; and their understanding, like their clothes, is cut according to the fashion.

【直後:解釈】
そういう人々(上で解釈した「精神的な乞食」ですね)は,怠惰であったり真実に対して無関心であったりするせいで,(真実という)この価値あるものを探し求める骨折り仕事を他人に任せてしまう。自分たちは「お下がり」で十分だというのだ*8。彼らにとって重要なのは,何が真実か,ではなく,何がそのトピックについて言われているか・考えられているか,ということなのだ。そして彼らの知識というのは,彼らのファッション(their clothes)と同じように,流行に(the fashion)に乗っかって切り貼りされるのだ。

ということで,この文章は,「知的怠惰」とでも呼ぶべき姿勢*9を厳しく戒める文章,ということができそう。

チラシに載っていた部分は,前半部は「喩え」なわけで,それならそれが分かるような文脈を示してあげないと,普通に「乞食dis+『opinionsについても乞食と呼ばれうる人がいるぞ』という謎の主張」で終わっていまいちピンと来ない。


【さらなる愚痴】
とまあこうやって解釈してきましたが,まあ楽だよね。ムズカシイ英文を,文脈から切り離して読ませて,教員側は前後の文脈も踏まえてしっかり予習をして,「これ知ってます?知らない?あらあ残念。こういう意味なんですよ」ってのは。俺は個人的に「知識でぶん殴る」系の授業って呼んでるけど,まあ楽。ちょっと調べれば,こっちの貯金もあるし,なんとかなる。
ただ改めて思ったのは,知識でぶん殴って生徒煽って「ヤバいこの英文分からない俺は勉強が足りないのかも」って思わせる手法,本当に好きじゃないんだよなあ。


書きぶりからして分かる通り,なんだかイライラしている一番の原因は,じゃあかくいう自分は,そういう授業に対する有効な対案をしっかり示せているのか?っていうところ。本当に情けなく,恥ずかしい話だ。
あと生徒の中にも,「知識でぶん殴られる」ことを望んでいる生徒がいるというか,勉強ってなそんなもんだよねと思ってる人もいるみたいだけど,こと英語に関しては絶対にそうじゃないと俺自身が信じているから*10,なんだかひどくもどかしいなあと思う今日この頃なのであります。急速にクールダウンして,さあこの辺でやめておこう。採点さいてん祭典!

*1:どれくらい宿題出すのか知らないけど,英検1級レベルの単語も分かるようになる,と考えたら,けっこうなもんだろう,という推測。

*2:この辺はいずれ,「生徒のしつけの問題」と変わっていくかもしれないけれどw

*3:だいぶ前から愚痴は始まってた気がするけどw

*4:とはいえこれは俺がチラシから写し間違えている可能性もある

*5:もちろん,実際の授業ではその辺カバーしてるんだろうし,今回はチラシの紙幅の都合で削除されてる,とも考えられるけど,それにしても!(ブツブツ

*6:party-zealは自信ないな。。

*7:manlyは基本的には「男らしい」ってことみたいだけど,別に男に結びつける必要はないような。

*8:occasionsが訳しづらいのでごまかすw

*9:反知性主義?なんて言葉も浮かんだけど,よく知らないから深入りはしないw

*10:もっと言えば言語一般そうだろう,と思う。だから古文とか漢文に「古作文」「漢作文」がないのは本当に謎なんだけど,これまた別の話すぎるなww

広告を非表示にする