さんだーさんだ!(ブログ版)

旧「◯◯な英語教員に、おれはなる!!!!」 - 大学院を終え、2015年度より中高英語教員になりました。

Teacher learning in the workplace - A study of the relationship between a novice EFL teacher’s classroom practices and cognition development

Kang, Y., & Cheng, X. (2013). Teacher learning in the workplace: A study of the relationship between a novice EFL teacher’s classroom practices and cognition development. Language Teaching Research, 18(2), 169–186. doi:10.1177/1362168813505939

読みました。自分の修論もこんな感じになりそうだってんで、ちょっと要約書いてみる。

構成は以下の通り(適宜和訳)。

  1. 背景
  2. 先行研究
    1. 新人教師とその特性
    2. 教員認知と認知の発展
    3. 行動の変化と認知の変化
  3. 方法
    1. リサーチクエスチョン
      1. 研究協力者の教室行動は時間が経つにつれ変化するか。するとしたら、どのように変化するか
      2. どいうった要因がその変化を引き起こすか
      3. 教員の認知は時間の変化に伴って変わるか。もし変わるなら、認知変化と行動変化の関係はどうか
    2. 研究協力者
    3. データソース
    4. データ収集手順
    5. データ分析
  4. 結果
    1. Valenの教室行動における変化
    2. Valenの実践の変化を引き起こす要因
    3. 教員認知の変化
  5. 考察
  6. 結論

非常にスッキリ。

それでは頭からみていきましょう。誰も興味ないと思いつつ、自分は確実に修論のどこかでこの論文引用するだろうから、わりと丁寧めに。一応「→」以降が読みながらの自分のツッコミです。

1.背景
1990年代〜2000年代にかけて注目が集まってきた教員認知という分野は、教師がいったい何者で、何を知っていて、何を信じて、何を教室で行うか、その複雑性を捉えようとしてきた。最近では教員養成の分野と結びついて、教員認知の性質および成長を理解しようとつとめてきた。
本研究は、学びの機会が相互に関連し、周囲の環境("social settings")の特性により実践が支援/束縛される"the real workplace"における教師の学びを分析する。本研究の目的は、教師の日々の業務における教師の実践行動と認知の成長との関係を理解することである。

2.先行研究
2.1 新人教師とその特性
新人教師は、教員養成課程で習ったコミュニカティブな教え方ではなく、ただ言語内容を習得させるような教え方に終始してしまうことがある。新人教師の実践は、それまでの被教育体験や、自分が卒業した教員養成課程、そして自分が現在働いている学校組織の文化に規定される。また、きっちりとメンターとなる先輩教師がつく場合や、協力的な同僚がいる場合、自身の仕事ぶりに満足感を覚えやすく、後々よい教師にもなりやすくなる。
→コミュニカティブな教え方のがいい、というのは「信念」ではなくて「知識」となっているのか*1

2.2 教員認知と認知の発展
教室研究の焦点が教師の行動から教師の思考やそのプロセスに移ってきた。Borg(2006)の「教師が日々の業務の中で頼っている("draw on")、知識・思考・信念のネットワークであり、複雑で、実践に基づき、個人化された、文脈依存のネットワークである('complex, practically-oriented, personalized, and context-sensitive networks of knowledge, thoughts and beliefs that language teachers draw on in their work')」という定義が引用されている。
初期の教員認知の研究は、教員養成課程の効力をみるという目的から行われていたが、教員認知は不変であるという結果から、かなり大きく変わったというもの、さらには個人や分野によって様々なレベルで変化したというものまで様々な結果が出ている*2
結果が違うというのにはもちろんプログラムや個人差、リサーチ方法の違いが絡んでいるが、それにくわえて「変化」の定義が様々であることが影響している。「柔軟性(flexibility)」が変化と考える人もいれば、より漸次的なものを変化と見なす人もいる。
Cabraroglu and Roberts(2000)は、11の変化のプロセスを提示している。すなわち、

  1. awareness(矛盾や葛藤、はたまた一貫性などに気づく)
  2. confirmation(すでに保有している信念を裏付ける)
  3. elaboration(既有信念をさらに深める)
  4. addition(新しい信念がくわわる)
  5. re-ordering(既有信念を組み直す)
  6. relabelling(構成概念(construct)に新しい名前をつける)
  7. linking up(概念同士を結びつける)
  8. disagreement(既有信念を棄却する)
  9. reversal(真反対の信念をくわえる)
  10. pseudo-change(信じたふりをする、誤った変化(false change←謎))
  11. no change

本研究では、"change"を"development or learning"とみて、教師を、"learners working in a learnign community"(ある学習共同体で働く学習者)と捉える。様々な場所(実践のふり返り・アクションリサーチ・授業研究・勉強会など)で学習する教師についての知見が蓄積されつつある。

2.3 行動の変化と認知の変化
教員の態度だけである指導法が実際に採用されるかどうかが決まるわけではない。Clarke and Hollingsworth(2002)*3によれば、教員の認知と行動の変化は、「ふり返り(reflection)」と「実行(enactment)」を媒介に、互いにつながっている。

3. 方法
3.1 リサーチクエスチョン

  • 研究協力者の教室行動は時間が経つにつれ変化するか。するとしたら、どのように変化するか
  • どいうった要因がその変化を引き起こすか
  • 教員の認知は時間の変化に伴って変わるか。もし変わるなら、認知変化と行動変化の関係はどうか

3.2 研究協力者
Valenという1年目の教員。北京の英語の先生。研究開始時に、すでに6ヶ月の経験あり。7年生(中1?)に英語を教えている。
学校で決められている教授・研究活動(the teaching and research activities(jiaoyan huodong in Chinese))があるらしい。
メンターはいるものの、忙しくてValenはほぼ1人で授業を行っている。同学年を教える同僚との助け合い。同僚間で足並みを揃えて教える部分もあるが、具体的な教え方は個人個人の先生に任されている。

3.3 データソース
インタビューと教室観察(非参与的観察: Patton(2002)*4)が主だが、フィールドノーツ・指導案・学校の書類やインフォーマルな会話、メール等も補完的に用いた。
Valenのバックグラウンドについてのインタビューは、教育経験・教員養成課程*5・指導のふり返り・EFL学習/教授についての考え・指導環境についてのコメント、といった点について半構造化インタビューとして行われた。

3.4 データ収集手順
2010年4月から12月。生徒は7年生から8年生に。第一期は週一回の観察で、教師がそこで何をしているかの大まかなリストを作ることが目的。観察後のインタビューにより、その指導がどういった認知の下行われたを確認した。トライアンギュレーションとして、Valenの自己レポートも収集された。
第二期では授業観察は2~3週に1度となり、変化があるかどうかを切り口に行われた。その変化のトライアンギュレーション*6のため、インタビューでの反応・指導案も収集された。
データ収集と並行してカテゴリ分けも行われた。第一期と第二期の区分けは、「理論的飽和」的なところで行われたが、第二期の中で新たなカテゴリが発見された場合は、遡って過去のデータからそれに当てはまる部分をピックアップした。

3.5 データ分析
3.5.a 観察データの分析
4ステップス。

  1. 授業のトランスクリプトを、表形式でまとめる。活動・時間・内容など。
  2. 演繹的にコード化
  3. 暫定的なカテゴリ・サブカテゴリを別のデータをコード化するために使用。
  4. そうして生成されたデータを組み直す

その結果出てきた変化のカテゴリは、

  • 言語知識の指導
    • 語彙の指導:意味の説明→意味の説明+文脈で理解させる
    • 知識固め:形式に注意させたドリルと練習→それらのドリル・練習の多用・意味に注意させた練習や言語産出タスクも追加
  • 言語スキルの指導
    • 読み方の指導:一文ずつ訳→口頭での訳を諦める、言語項目の明示的な指導→自己発見型の活動
  • クラスルーム発話(discourse):"OK"の多用→より即座にポジティブなフィードバックを与える
  • 教材の使用:テキストの使用→マルチメディア教材の使用
  • 個別化:色々なレベルの生徒を一様に教える→宿題の個別化・スローラーナーへの配慮

の5つ。

3.5.b インタビューデータの分析
何度もスクリプトを読み返し、先行研究から設定した「変化」のカテゴリに当てはまるものがあるかどうか探す。以下の3つが主に出てきた。

  • 教員認知(外国語・外国語学習・外国語指導・教員の役割・生徒・タスクの選択・動機づけ)
  • 教員認知の変化(変化の内容・変化の過程)
  • 行動の変化を生む要因(教員の経験・教員のふり返り・指導の文脈)

4. 結果
4.1 Valenの教室行動における変化

  1. 言語知識の指導
  2. 言語スキルの指導
  3. クラスルーム発話
  4. 教材の使用
  5. 個別化

以下具体的な事例を載せつつ、この5つの変化について説明をくわえている。
とはいえ、1つにつき2段落程度で、その場がイメージできるような引用がくわえられているわけではない。以下「言語知識の指導」の中の「語彙の指導」についてのみ要約。
当初は新しい単語・フレーズを逐一明示的に意味や用法を使いながら教えていた。文脈の中で単語を提示するべきと教員養成課程で知ってはいたものの、授業時間がタイトでありそうした明示的な教え方をしていた。2学期に入ると文脈の中で提示する方法と明示的な使い方を併用し始めた。Valenは、スケジュールが前ほどタイトではなくなったと説明した。
→「時間感覚」とも言えるような、このタイト感の低減が何によってもたらされたのかは多分触れられていなかった。単純に担当する授業数が減ったような感じもするけど、一年の途中で時間数減るってありえるのかな。気になるところではある。

4.2 Valenの実践の変化を引き起こす要因

  1. 指導経験
  2. 実践のふり返り
  3. 指導の文脈

ここではValenのインタビューデータが豊富に引用されている。たとえば2番目の「実践のふり返り」では、語彙の指導に関して明示的説明と文脈提示の両方を使い始めたことに関して

それはあなたが先学期質問したからってのが大きいですね。あとで考えてみたら、本当につまらないなあって。あの時はそうやって教えないと周りの先生についていけなかったから。今学期はそこまでスケジュールがタイトじゃないから、ちょっと変えたほうがいいかなって。簡単な単語を教える時は写真を使って示してますね。写真が使える時は使うようにしています。でも難しい単語の時はやっぱり直接教えてますね。

→最初の「あなたが先学期質問したから」("It's mainly because you asked about this question last semester.")ってのはけっこう気になる。

4.3 教員認知の変化
実践行動上の変化は、思考の変化とともに起こり、また思考の変化を促すものとなった。先に挙げたうち、confirmation(教員養成課程で知識としては知っていたものを実際にやってみたらやはり効果がありそうでますますやるようになったなど)・elaboration(語彙指導の2つの方法は、長短あるので使い分けすべきと考えるようになったなど)・disagreement(生徒と長い時間を過ごすにつれ、生徒の能力を過小評価していたのを修正し、より生徒に活動させることになったなど)が確認された。

5. 考察
行動面での変化が、全て認知面での変化から来ているわけではない。予想通りの認知面での変化が起こるわけでもない。Clarke and Hollingsworth(2002)は教員の学びの過程をアクションリサーチの円環(実践に関する情報を集め実践を改善しまた情報を集め改善に向かう)に例えたが、こうした行動の変化の円環の中で、実践上の理論を得たり認知の変化を経験したりする。
教師認知の発達は、ふり返りを媒介としながら教師の知識・信念の体系と教室での実践とが互いに影響しあうプロセスのもたらす結果である。
("Teacher cognition development is the result of a continuous process in which the knowledge and belief system cyclically interacts with teacher's classroom practices under the mediation of teacher reflection.(Kang and Cheng(2013: 182))"これはいずれ使うやもしれぬ…。)
こうした認知の発達が起きるには、いくつか条件がある。
まず、変化という概念が教師自身の経験に基づく反応として出てこなければならない。当初Valenはふり返りがなく自身の実践についての情報が得られていなかったため、研究や指導に対して前向きになれていなかった。自分が置かれた文脈における自身の可能性を高く見積もり、有効活用する教師ほど成長することはTsui(2003)などでも知られており、教師がなぜその特定の道筋をたどって変化していったかは、それぞれに異なる反応のパターンに応じて決まる。
次に、新しい概念を試すため、「実験(experiment)」してみることが必要。自身の状況・信念に照らしていけそうだと思えば実行に移されやすいだろう。
さらに、新しい行動はフィードバックを通して検討され、その後定着するかが決まる。フィードバックのソースは自身の感触のみならず、学習の結果、同僚・校長・保護者等の他者からの意見などがある。ネガティブなフィードバックがあればやめるかもしれないし、変更をくわえるかもしれない。反対にフィードバックがポジティブであれば続行されるだろう。
→フィードバックソースの重みづけはどうか。つまり、保護者や校長が反対しようと続行する、などといったことはありえそう。総合的にみてそれをポジティブと捉えるかネガティブと捉えるかにこそ、その教師の認知が現われていると言えないか。
最後に、変化の過程において極めて大事なのは、実践と認知の相互作用である。新しい概念を得たらそれが実践にどう落とし込めるのかといった具体的な方策が次に考えられる。
新しい実践から得られた暗黙知を言語化して一般的な実践理論にするということだけでなく、新しい実践から得られたフォーマルな知識を自身の信念体系に組み込むことでもある。このような理論化を経て、教師は自身の知識の使い手・作り手となるのだ。
同時に、そうして得た知識を実行に移して、この"interactive cycle"を一旦終える必要がある。新たに得た認知によって実践が変わり、新たなcycleが始まる。
→こうしていくといつまでもこのcycleが続いていきそうだが、実際ベテランの先生と若手の先生で、そのcyclingの頻度・質になにか違いはあるのか。

6. 結論
教員認知は循環的に("cyclically")実践行動に影響を与えており、教員としての継続的な成長に貢献している。教員の学びに関して、以下のような示唆が得られた。
第一に、現職教師の学びをみる際には、種々の業務が教員養成課程で得られた学びを強化するものとなっているかという点をみる必要がある。*7
第二に、協力的・支援的な同僚関係が教員の学び促進のために大事。
第三に、教員は、積極的に自身の専門職としての向上に向き合わなければならない*8

こうした示唆は得られたものの、1事例・1年間の研究であるので教員の変化(長期的なものを含む)に関する全ての問いに答えることはできない。
→何人集めて何年ついても「answer all the questions involved in so complicated a matter as teacher change」なんて不可能って考えれば、意味を成さない文だとも言えそう。クリーシェか。笑


…長かった。汗
自分はどういう研究をしていこうかと考えると、
現在のところ、
1年目・2年目・4年目の先生につくことを考えてます。
Kang and Chengの研究との差別化をどう図ればいいかに関しては、ううむ。またこの3人につく意味(比較の視点を持ち込んでいるのかとかなぜその3人なのかとか)もよくわからないなあ。
また色々考えてみて、何か思いついたら書いてみよう。とにかく、この論文はいい下敷きになりそうだと思ったので、詳しめ(8,000字以上!!)に書いてみました。

ああもう4月だ。嘘だうそだ。

*1:ちなみに知識と信念の区別は非常に難しいが、前者はある程度そのコミュニティで受け入れられてるものを指す。たとえば地動説なんかは昔は「信念」に過ぎなかったけど今は「知識」だよね、とか

*2:これはもうまったくもってメタ分析は不可能そうw

*3:読んでみなくちゃ。DL済

*4:これも読んでみなくちゃ。図書室にあるっぽい

*5:professional development experiencesなのでもう少し広義かもしれない

*6:別の視点・データソースからも同じ内容が確かめられるかどうかって程度の理解

*7:"First, approaches to in-service teacher development should be reevaluated regarding if the activities involved are to reinforce the effect of pre-service education and positively impact on teacher development. If teachers can observe the espoused theory practiced in the classroom with promising results and no major hinderance to their work, they will be tempted to experiment merely out of interest.(Kang and Cheng(2013: 184)"の意味が分からない。"the activities involved"は研究における活動(インタビューとか観察とか)なのか教員の業務(授業・ふり返り)なのか。後半も、"espoused theory"はSLAに支持されているのか、長年の経験に支持されているのか。いずれにせよ、今やっている実践がいい感じだったら、さらなる改善のためにちょっとずつ工夫を試みるだろう、的な意味か

*8:Finally, teachers should assume an active role in their own professional development.

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