HLC 春期セミナーに行ってきました。
知り合いの院生の方にご紹介いただいて、質的研究の概論があるとのことで申し込みました。
大阪大学の義永先生の「第二言語習得研究の方法論―質的研究入門―」ってやつです。
2日計6時間のセミナーで、最初にチラッとSLAの概説、少し質的研究法の概論を扱って、その後実際に論文を批判的に読む、という形でした。
今まで断片的にしか知らなかった質的研究の方法論がちょっと整理できたかと思うのでメモ。
ただいわゆるホントの「概論」でしかないので、実際使うとしたらセミナー中にご教示いただいた参考文献をしっかり読まなくちゃなあ。
- 会話分析(Conversation Analysis: CA)
- 会話の解釈に、話者の属性や来歴などを持ち込まない。会話の中にそうした解釈を支持する根拠があれば、そう推測して良い。(彼はここでこう発話しており、これは彼が母語話者性を志向していると言える、など)
- 潔癖にやるのは難しいと思った。(他の解釈もあり得るよね?というツッコミが入りやすそう)ただ、ロボット工学やら、人間の会話の特徴について考えている研究者とコラボしたりしてるそうです。
- 談話分析(Discourse Analysis: DA)
- 会話の解釈に、話者の属性や来歴などを持ち込む。(この発話は、彼の属性を考えると、こう解釈するのが妥当だろう、など)
- 自分は事前に若手教員の方々の属性・来歴を聞く予定だし、きっとこんな感じでやってくんだろうなあ。
- 批判的談話分析(Critical Discourse Analysis: CDA)
- 研究者が事前に問題と思う事象を、実際の会話の中に見出す。研究者のスタンスは明確。
- こうした立場を嫌う研究者もいるとのこと。そりゃそうか。
ここで気になるのは、ナラティブ分析(Narrative Analysis: NA)とは?という点。聞けばよかったなあ。
少し調べた感じ、その人にとっての経験・その意味、的なものに集中しているのかなあ。
ライフストーリーについては少し今回のセミナーでも触れたけど、これとはどう違うのかしら。
その後4本の論文を批判的に検討。というかもうフルボッコ感が強い。
データ解釈が強引だ、開示されていない、比較の視点を持ち込んでいるのかいないのか不明瞭だ、この1人に聞いたことがどんな意味があるんだ*1など、どの批判もまっとうではあったものの、そうした「基本的」なことを著者たちが知らなかったとは思えない。つまり、筆者たちも自身の研究の不十分さ(それがデータに起因するのか、分析手法に起因するのか、紙幅の都合なのかは分からないけど)は自覚しているだろう。ということは、そうした事柄を自覚していることと、論文中に実際にクリアできることは別物で、つまり批判している僕たちも、いざ論文を書いたら同じようなツッコミが無数に入っちゃうんだろう、と。おぉこわ。
そんで懇親会にも参加して、質的分析する院生同士でデータ持ち寄って色々検討できたらいいね、という話をしてました。乞うご期待!!(誰が
今気になっていること
- データ分析手法(CAだとか
DAだとか)と、データ収集手法(インタビューだとか観察だとかフォーカスグループだとか)の関係
-
- 質的研究におても "garbage in, garbage out"な気はするけど、何が"garbage"を作るのか
- 質的研究において量的観点がどう活かされるのか
- グラウンデッド・セオリーでデータを切片化してつないでいくとしても、結局個別の文脈を捨象しているよなあ
- 質的研究における分析手順の開示って、すごく手間だよね(Rならスクリプト保存するだけなのに!!笑)。
- 質的研究ソフトだと分析手順が動画で残せるとか…。笑
- 質的研究における積み重ねと、先入観
- 見えてきたものが先行研究の理論にどう位置づけられるかを頭の隅で考えつつ(だから理論も知っておかなくちゃいけない)、同時に「まっさらな状態」でそこに起きていることを見なくてはならない(ヒー)
- それより何より今週日曜に第一回目のインタビューがあるのでちょっと(いや、かなり)怖い。
そうそう、来週はEASOLAでも発表させていただきます。
EASOLA: Education, Anthropology, and Sociology of Language: 第29回例会 - 3月24日(月)
よろしくお願いします。ヒー。
*1:余談だけど、この「n=1」批判が質的研究を志向する人たちから出たのも少し驚き。それめっちゃ自分に刺さるブーメランなんじゃ?と思ってた。でもまあ、だからあえて俎上に上げるべきものなのかもしれない