さんだーさんだ!(ブログ版)

2015年度より中高英語教員になりました。2020年度開校の幼小中混在校で働いています。

"What Should Every EFL Teacher Know?" (Paul Nation) Chap.14 How Do You Plan a Language Course?(後編)

こんにちは。名刺を作った!と思ったら専攻名を間違えてしまいました。笑
というわけで後編です。前半では、コースをデザインしていく際の抽象的な話が主でしたが、後半は具体的なシラバスの組み方です。



◯Syllabus Design
いつ何をどうやってどうテストするのか。それらをはっきりさせるために、前半でみたような、環境だとか生徒のニーズだとかを知る必要がある、とのこと。
また、カリキュラムと実際に行われる活動に齟齬がないよう、要らない活動は削るべし、とも。以下、シラバスデザインの3つの柱をみていきます。


(1)Content and sequencing
 コース内の活動の配分をどうするか。本書ではfour strandsを大体同量含むようにすることを推奨している。その他、どういった言語項目(原語は"language feature"であり、ここには単語も含まれる。文法と言ってしまうと狭すぎるだろう)を扱うのか。以下本文中では、初級レベル・中級レベルで扱われるべき文法事項がリストで示されている。また、話し言葉におけるコロケーションの研究も進んでおり、最も使われる一群のコロケーションを教えるのもよい、とのこと。リストもついている。you knowが一位、I thinkが二位ってのがなんとも日本ではあり得なそうで面白い。でもyou knowって教える必要あるのかな。初級の頃からこれ連発する人になってしまっても、とは思う。
 また、こうした言語項目を扱いつつ、どう授業を展開していくかも大事。なんだか大事そうな文章があったので引用。

The idea that each lesson should cover a new grammar feature no longer makes much sense when we realise that teaching only makes a small contribution to total learning, and that items need to be met many times in many different contexts in order for adequate learning to occur.(p.183)

この単語・文法を生徒にマスターさせる、というものを事前にきちんと決めておくことが大切。最低10回はその文法項目に出会わせないと、とのこと。
 今までに紹介してきた文中の単語の難易度等を判断するソフトなども総動員して、習得させたい単語にもたくさん出会わせる。さらに、難しすぎて本来学ばせたいことの学習を阻害するような文法項目や単語には極力出会わずに済むように調整も必要。
 こうしたvocabulary controlに反対し、authenticな文章に触れる方が良いとする教師・学者もいるが、この考えには2つ問題点がある。まず、meaning-focused inputをさせる際に語彙統制を行わないとすれば、6,000語程度の知識がないと無理。2つ目の問題は、authenticな文章には、同じ単語がなかなか出てこない。大体半分の単語は1度きりしか出てこない。これでは、生徒がその単語を習得するのに十分とは言えない。てことはauthenticな教材を推す人は、meaning-focused inputをするなと言っているに等しいが、それはおかしいでしょう、との主張でした。
 さらに耳寄りな話。同義語や対義語、同系統の言葉(果物の名前、とか)を一度に教えるのは混乱を招く。shortとlongを一緒に教えたら、長さ系の言葉ということは理解できても、どっちがどっちの意味だか迷う生徒が出るだろうとのことで、"Such words should be taught at different times, waiting until one is well known before learning the other."と言っています。


(2)Format and presentation
 typical lessonの形式を決める。「本ブログ内第一章の記事」でも紹介した図1.3なんかは活動の組み立てに参考になるかも。また、授業の最初に行う活動を決めておくと、設計が楽になる。


(3)Monitoring and assessment
 テストをどう行うかを決めておく。しかし生徒がテストのためだけの勉強をしてしまわないよう、テスト対策自体が有益な学習活動になっているかを常に確認しなければならない。speed readingや10 minute writingのグラフを活用するなどして、多角的な評価を行うべし。


◯Evaluation
最初に挙げられている図の中では、Evaluationの円が他の全てを囲っていた。これは、「このコースはいいコースか?」ということをevaluateするもので、具体的に各部分に関して以下のような問いを投げかける。

Part of the curriculum design process Questions
Goals 正しい目標設定ができているか
Environment analysis マテリアルが多すぎないか。生徒のモチベーションは高まっているか
Needs analysis 全ての生徒のニーズに合っているか。生徒が翌年やることに対する準備になっているか
Principles 4つのstrandsが等しく含まれているか。関連項目間のつながりを無視していないか
Content and sequencing 生徒の語彙は十分なペースで増えているか。最も必要なコロケーションはカバーされているか。生徒は十分読んでいるか
Format and presentation 学習活動は最適なものか。時間は効率的に使われているか。宿題は適切な量出ているか
Monitoring and assessment 誰か落ちこぼれていないか。ライティングに対して十分フィードバックを受けているか。言語の知識が増えているか
Evaluation コースの一番大事な部分を評価しているか。生徒からのコース評価を十分受けているか。毎年コースを改善しようとしているか


◯Content-Based Instruction
他教科のことを学びながら外国語の知識も増えていく、というこの形式がideal conditionだと筆者は言います。その理由は以下のとおり。

  1. ある教科で用いられる語彙は限られているので、一度それらが入ってしまえば語彙に関する負担は少なくなる
  2. その教科に関する知識があれば、内容に関しては注意を割かなくてよくなり、言語項目により多くの注意を割ける。背景知識があることで、単語のguessingもやりやすくなるだろう
  3. 意味ある問題解決型の授業やディスカッションなどができるだろう
  4. 似たようなcontentsが度々出てくるため、同じ単語に違った文脈で度々遭遇する

しかしながら、以下のような欠点もある。

  1. content-focusedとは言え、文法事項などのlanguage-focusedの活動も必要なので、そこにも十分な時間を割かねばならない
  2. content-based graded materialは少ないため、extensive readingはやりづらい。難解な文章は、教師がAntWordProfilerなどのソフトを使って易しい語に直す必要がある。
  3. English for special purposesに似ており、つまりその分野では使えても、他の分野ではあまり使われない語彙が含まれている場合がある。

four strandsの考え方に基づけば、3/4の時間はmeaning-focusedな活動に当てるべきであり、content-based instructionはそれを容易にする、と。
また、2点目に関しては、本書もこのようにして書かれており、4,000語の語彙があれば読めるようになっているんだって。へーっ!


◯Choosing a Course Book
 コースが置かれている環境やその目標、生徒のニーズなど、今までみてきた諸々のことに適合した教科書を選ぶ必要がある。絶対必要な要素と、あれば嬉しいな程度の要素に分けて考える。その重み付けをした上で、各種の教科書をみていく。


長かったけど、本章は以上になります!今週はLET(外国語メディア学会)@文京やら全国英語教育学会@札幌やらにお邪魔するので、ちゃんとレポート着手〜完成しておかなくちゃなあ。