さんだーさんだ!(ブログ版)

2015年度より中高英語教員になりました。2020年度開校の幼小中混在校で働いています。

「文学」とは。

ここ数日、授業でも自主ゼミでも勉強会でも「文学」って話が出てきていて、これは一体なんなんだ、と。


まず授業で先生は、「英語を学習する中で文学習わなかった人、いるの?」的なことを仰っていた。
確かに自分は中高の授業で、ポーの「THE BLACK CAT」とか、ディケンズの「Great Expectations」とかを、Graded Readersとして読んだ。
そしてそれは非常に面白かった。"Great Expectations"のラストの、"I saw no shadow of another parting from her."なんて文章は、強烈な印象を与え、今でもわりと覚えている(さすがにうろ覚えでググったけど)。当時は「shadow」に実際の「影」と、彼女から再び別れる「暗い予兆」的なものをかけた物言いだと教わって、すげえ!と思ったものだけど、もっとそれっぽく言えば「シンボリズム」的なものに自分が初めて触れたものだったのかもしれない(覚えてないだけでその前にも触れていたのかもしれないが)。
けれど、それが「文学」としてだったのか、正直よく分からない。文学性、的なものはあんまり教わらなかったんじゃないかなあ。Styleやらなんやら。


以前「星新一を英語で読むのよくないですか?短いし、平易だし、意外なオチがあって読むの楽しいし」と言ったら、「それは文学じゃないよね」と上記の先生に言われた。まあ、「英語力向上のために文学を読みなさい」的な話だったから、「平易」とか言ってる時点で終わってるんだろうけど。笑
これだけ聞くと、「読んでいる対象が文学作品(と呼ばれるもの)か否か」が、「文学しているかどうか」の決め手になるようにも思えたけど、文学を研究している学会では、「英語教科書を文学的に読む」なんて試みもあるらしく、だとしたら文学とは何を読むかではなくどう読むかである、なんて見方もできそう。


そして、仮に「文学作品とされるものを読みさえすれば文学を扱っている、というわけでもない」としたら、なおさら専門的なトレーニングが必要そうだよなあ。
文学が英語教育に必要だ、という人は、英語教育にマストと考えているのだろうか。だとしたら、上記のハードルから、なかなか難しそうだな、とは思う。
マストではないが、今は冷遇されすぎている、という辺りが妥当なのだろうか。つまり、「文学いいと思うんだけど、何?コミュニケーション?そっちしなくちゃいけないの?文学やるのやめとくか…」的な先生が現場にいるとしたらそれは不幸だから、自信を持って文学をやっていこう、的な。


その後参加した勉強会では、国語教育で文学をやっている人がいて、どうやら国語教育では、文学よりも論説文・説明文における論理展開、的なものを重視する人が多いらしい。
以前のブログ(英語教育と英文学 - ◯◯な英語教員に、おれはなる!!!!)にもあるが、「どうして文学を国語教育でやらないのか」という質問をした時も「国文科がそれをやろうとしない」的な事情が感じ取られて、それと符合しているのかな、と。
彼女も文学教育を、単なる「実践研究」(主観的なたった一事例での話だ、的な批判をしばしば受けているもの)から脱却するためにどうすればいいのか、というのを色々考えているようだった。


最後の授業で読んだ"A Course in Language Teaching"の中の「文学の効用」的な部分では、以下のようなものが挙げられていた。

  1. 楽しくてモチベーション高まる
  2. 文学の裏側にある文化についての知識を与えることで、生徒の視野を広げる
  3. 共感したり、批判的に考えたりする力を養う
  4. ことなる人々の状況や争いに気づける
  5. 文学は、他のどの学校科目とも同じように、それ自体価値がある
  6. 言語使用の本質的な部分である、ことなるスタイルなどの使い方を学べる
  7. 語彙増強に役立つ
  8. 読む力を育てる
  9. 読んだ後にディスカッションやライティングにつなげられる

確かに、実証難しそう…。「語彙増強」は確かめられているのかな。読んだ中に出てきた未知語はほっとくと3割くらいしか習得されない、とかも聞いたことあるし。


ちなみに文学の欠点として同書に挙げられていたのは以下のとおり。

  1. 生徒には難しすぎる(簡易版はあくまで簡易版であり、原著に比べたら落ちる)
  2. 長くて読むのに時間がかかる
  3. その文学が拠り所としている文化は、生徒にとって異質すぎて、自分と関連付けて考えられないかも
  4. 教育に用いたがために、文学の面白さをspoilしてしまうかも
  5. 自分とは関係ない、と思う生徒も多い

うーむ。ただ、このpros/consが、外国語でなく日本語に置き換わった時にどうなるのか、っていうのは考えてみるべきかもしれない。


しばらくこの辺の話は考えていこう。(曖昧