さんだーさんだ!(ブログ版)

2015年度より中高英語教員になりました。2020年度開校の幼小中混在校で働いています。

「ICTを活用した教育の今とこれから」

昨日の18:30-20:30、東大にて「学校づくりゼミ」というのがありまして、参加してきました。
https://www.facebook.com/events/470100616421953/?ref=14
行政側に入って、学校教育へのICT導入の様々な現場をみてきた中川先生と、実際に小学校でバリバリ使っている青山先生の講演でした。
以下、その場で取ったメモベタ貼り。
()の中は、そこで流された動画の説明です。

◯学校教育におけるICT活用の実際(中川一史先生@放送大学
www.hitorin.com ※先生のHPです

紙の教科書からデジタル教科書へ。
学校でのICT:パソコン・情報端末・インターネット・プロジェクタ・デジタルテレビ・電子黒板・プリンタ・実物投影機・デジカメ、などなど。しかし、交付されるお金の使い道は自治体によってまちまちなので、学校によって充実度は違う。
教員の校務用コンピュータ整備率→102%
校内のLAN整備率→83.6%
インターネット接続率→高速:98.5%・超高速(30Mbps以上):68%

ICTの普及経緯:
教師が使う:テレビ→プロジェクタ/実物投影機→デジタルテレビ/電子黒板
生徒が使う:  PCルーム(40台)   → タブレット
(テレビを活用した学校風景 「子どもたちの眼の色が違う」)
生きた教材が外から情報がやってくる、というのがテレビが学校に入ってきた時の利点

PCルーム:70年代から整備が始まり、80-90年代には広がっていたが、準備時間が必要で、あんまり流行らなかった。その間に入ってきたのがプロジェクタ・実物投影機。便利。
地デジ化で、それまでの20型テレビを50型に変える学校が多かった。ちょっとした写しものはプロジェクタを使わずにもできるように。

ICTの活用効果

  • 意欲・関心の拡充:発言や活動の活性化・集中力の高まり
    • 特別支援学級の先生がよく言われる。
  • 知識・理解の拡充:チア検できない情報の提示・くり返し・焦点化
  • 技能の習得:「わかる」から「できる」へ
  • 思考の深化・拡大:思考の可視化

(ミニホワイトボードを使いながらグループディスカッション。実物投影機で拡大して数字の一つ一つを見ながら説明)
(直角の引き方を、実物投影機にのもとで手元を見せながら説明)
(初めてりんごを包丁で切る時に、動画で確認。また、手元をテレビに映しながら説明。ABC Cookingみたいだ!笑)
(書写でも。デジタル動画を見せながら、手元を見せながら練習。最後はもちろん練習をして、「できる」まで誘う)
(7年前の理科の授業。セルロイドの板の後ろからプロジェクタを投影して、書けるように。すげー!自分の体に人体模型を投影。すげー!!)
(横浜の小6。絵の解釈をiPadで投影しながらプレゼン。身ぶり手ぶりは担任に似てるらしいw)
(小2国語。「がまくんとかえるくん」を読んでかるたを作る。みんな根拠付けながら、電子黒板見事に使いながらやり取りしててスゴい…!!)
→ここで自分が特にスゴいと思ったのは、根拠付けながら討論しているところ。「ここで◯◯という表現をしているけど、どうかな?」「ここにこう書いてあるから、◯◯は違うと思います」と批判したり、「でもこっちにはこうあるから、◯◯でいいと思います」とディフェンスしたり。

タブレットの話。2011年に文部科学省が「教育の情報化ビジョン」を打ち出した。総務省と一緒になって、モデル校では1人1台導入。現在も試して使うところが増えつつある。
「教師が使う・知識の定着のため」から、「生徒が使う・思考表現の手段」へ!
今の小学校の机の脇には、絵の具ではなくてタブレット端末がかかっている!へー!
→この写真は衝撃。今の小学生は、僕らのそれとは全く違う学校生活を生きているんだろう。

タブレットを使った絵の解釈の授業。ズームしながらみんなで同じところを見ながら話ができる。
壁新聞の編集もラクラク(絵を動かせば文章が逃げる)。
中1:水圧・浮力。自分の班の証拠がエビデンスとして確かだということを記録→後で示せる形で保存。
紙の価値は変わらない!:資料を見るところはiPadで、ワークシートは紙で。
和歌山。全市に20台ずつ導入(←少なくない?言い間違い?)。子どもたちは、教員からの指示は特にないのに紙とiPadを状況に応じて使い分けながら話し合っている。

タブレットPC・端末の導入ケース
教育委員会の導入:グループ分・クラス分・複数クラス分・全校分(大阪はH市長の号令の下、iOSかWindowsを全校に配備。なかなか難しい)
学校単位での購入:学校の経費(iPadは厳しいがAndroidなら)・PTA費・助成など
外部プロジェクト参画:検証協力をすることで導入
BYOD(Bring Your Own Device):家庭での導入(絵の具とか書写道具のレベルの安さになれば)
下線部どちらかに収束するだろう、とのこと。


◯小学校国語科におけるデジタル教科書の活用(青山由紀先生@筑波大学附属小学校
(1年生が実際に使っている電子教科書。「電子黒板」というネーミングがどうだったかは分からないが、便利なプロジェクタ、程度の意味。)
掛図教材(1枚25,000円!!)も電子黒板で代替。ズームして、絵の一部に話題を集中させることができる。話題の共有。
思考力・判断力・表現力と絡めると、思考と視覚は関連している。
「入門期はみんな特別支援みたいなもん」
紙でないから、消すのも楽ちん。先生の顔色みなくてもたくさん間違えられる。笑
「先週◯◯ちゃんがここに線引いて説明したところで終わったよね」みたいなことで、先週の記憶をたぐりよせやすくなる。
デジタル教科書、そのまま印刷すればワークシートになる。吹き出しを添付したりも簡単。

「くじらぐも」の挿絵。いきなり全部を見せるのではなく、ズームして、下から上に移動していくことで、街が小さくなって空の雲に登ってる世界に入っていく。「作品世界に押し込める」。明後日の荒唐無稽な吹き出しは作らせない。「どうやったら狙いに則した使い方ができるのか」を吟味する必要がある。

「じどう車くらべ」:仕事のための作りは動画でみせないと分からない。最初は無音でみせる。「言葉を耕す時期なので、動画をそのまま見せるわけではない」。絵を描く時間より文章を書く時間を充実させる。
論理的思考力、に関して「すがたを変える大豆」を例に取ったお話。論理とは文章に書かれていないもの。8段落。どの段落のどの写真も拡大・提示できる。文章中にない情報が写真で提示されていることも。
マインドマップ的なものもソフトの中に標準装備されていて、非常に便利!1段落1「製品」ではなく、1「くふう」だ!ということも、マップに書く中で理解しやすくなる。
「すがたを変える」シリーズ。牛乳・麦など。上述のマップの中心を「大豆」から「牛乳」に変えれば使いまわせる!模造紙で書くよりもはるかに分かりやすいし、サイドラインとマップの色を対応させることも簡単。
行きつ戻りつしながら線を引き直すことも簡単。線の色の分量が変化することで、論理の展開が追いやすくなる。
タブレット。先生のタブレットには、クラス全員がどこに何色の線を引いているか、生でみることができる。意図的な指名ができる。線を引かせる時間も短縮できる。
指導者用のデジタル教材がまず普及して、生徒の手元の紙をいずれタブレットに代替していく、という流れになるか。

→青山先生のお話全体を通じて思ったのは、ICTを使うことで、子どもの注意の統率は容易になった分、それによって失われるものにsensitiveでもなければいけないのかな、ということ。例えば先生は、「くじらぐも」の雲に乗った子どもたちに吹き出しをつける授業で、ICTを使って物語の世界に子どもたちを「押し込める」ことで、「落ちる」とか「押すな」とかの「荒唐無稽」な言葉を排除して、授業の狙いに沿った吹き出しをつけさせることができるようになる、と言っていた。
けどまあ、これも良し悪しだよなあ、と。自分は小学校国語がよく分かってないせいで「押すな」とか「落ちる」とかがどうして「荒唐無稽」なのかは分からなかった。
でも、授業の中で「これが求められている。言うか」「これは荒唐無稽だな。黙っとこ」なんて、発言を暗黙の内に取捨選択する、なんてのもhidden curriculumの1つかな、と思うし、だとしたら何も考えなくても授業に則した発言ができてしまうのは、そんなに望ましいばかりのことでもないのかも、とは思った。勘違いかもしれない。

◯質疑応答
Q1 to青山先生 低学年のうちは視覚を制限するのはよいが、高学年になるにつれ生徒の自由に好きな場所にフォーカスさせることが可能になると思うが、どうか。
A1 高学年になるとページ数・行数が増えるので、フォーカスさせたい時には紙より便利。非連続型テキストも増えるので、やはりデジタルが便利か。生徒のノート・教科書をみんなに見せる書画カメラもある。色々使うか使わないかは別にして、スイッチを入れとくと便利ね。


◯グループディスカッション

  • 視覚的な補助があるといいよね
  • 時間が短縮できる、という利点が押されている気がするが、本当の目的が見えづらい?もっと有効な使い道があるんでは。
    • 「よりよい理解」的な話では。
  • iPad 4万円×40人。ヒー!
  • たとえば文字の書き方は線をばっと引くだけでは分からない。功罪あるよね。
  • 黒板を手で写しながら授業を受けるvs写真を撮って授業直後でノートに清書
    • 後者のほうが知識の定着につながってる!でも「書く」が大切なのはありそうね
  • 紙の辞書←→電子辞書、的な話に近いかも。
  • 電子教材で受け身にならないかが不安。
  • 「子どもの思考に合わせて運用」という話があったが、それなら良い気がする。
  • 学んだことのアウトプットの場になりうる。
  • facilitatorとしての教員。
  • Excelがちゃんと使える教員は4割でも多い方。
  • 「寄り道」が減る。


◯会場全体での意見交換

  • 事例を積み重ねてこれから理論になっていく/クラウド化。データをどう書いていくか。民間の会社が入ってくる。/ICT←→やっぱり紙、のすり合わせ。「これやって何になるの?」的な人に対してどう対応するか。
  • 先生の技量・科目に依る/自由度をどこまで広げるか狭めるか
  • ビッグデータとして活用/地域格差
  • ICTでしか実現しえない学び、とはなんなのか/「反転授業」。リアルの場では何が必要になるのか

◯まとめ
中川先生
タブレットだと教員が触れながら学べる
今が過渡期。機器・ソフトは高機能になるだけでなく、シンプルになっていくだろう。「紙との使い分け」なんて論点は、淘汰されていくかも。フィンランドのInteractive Whiteboardは「研修どうやってるんですか?」「必要ない」と言われた。そういう状況が日本にも来るかもしれない。

青山先生
できることが増えると、考えるべきことが増える。発問と指示は種類が違うので色々考えていかなくてはいけない。
「ICT支援員」を入れて、さらにお金がかかる。
ここ10年で、機器・ソフトはシンプル化が進んでいる。「授業としてなんでこんな凝ったものを作ってるの?」と思っちゃうくらい作りこむ先生は、授業の目的を見失いがち。
個人持ちにならないと家に持ち帰って復習ができない。使いまわすと、他の人のデータを消したりする人もいる。

中川先生
個人持ちの話。学校が3種類を提示して家庭に買わせても、
反転学習。家で動画、学校で議論。家で動画をみてこない人が半分くらい。公教育にどう入れるかは、これから議論になるだろう。
教員用の提示教材は教科書会社各社がつくっているが、学習者用の教材は、今のところ大手の東京書籍くらいしか作っていない。12社が共通フォーマットでそれを作っていくと表明したが、まだまだこれから。
「デジタル教科書」というのはない。検定を通ってないから。紙の教科書に準拠した副教材、という扱い。



本当に、今の子どもはデジタルネイティブなんだなー。よいなー。でも地域格差とかどんなもんなんだろうなー。ICTの何がよくて何が悪いんだろうなー。でも板書の時間が短くて済むとかは教員にとっては便利だよなー。結局「教師が前に立って生徒に教える」的構図は変わっていなかったけど、そこももっとドラスティックに変わってくるのかな―。辺りが気になりましたとさ。おしまい。