さんだーさんだ!(ブログ版)

旧「◯◯な英語教員に、おれはなる!!!!」 - 大学院を終え、2015年度より中高英語教員になりました。

『学習英文法を見直したい』「学習英文法を考える際の論点を整理する」(亘理陽一)

学習英文法を見直したい

学習英文法を見直したい

  • 作者: 大津由紀雄,亘理陽一,安井稔,江利川春雄,斎藤兆史,松井孝志,鳥飼玖美子,日向清人,久保野雅史,末岡敏明,岡田伸夫,柳瀬陽介,田地野彰,山岡大基,高見健一,真野泰,福地肇,馬場彰,大名力
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2012/07/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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駒場図書館から借りてちびちび読んでおります。
「学習英文法」を巡って英語教育・その実践・学習理論・ビジネス英語など様々な視点から論考を集め一冊の本にまとめているものです。
一応目標としては、一日一論考は読んで、なんなら内容を備忘録的にここに書いておこう、と思ったのですが、
一日一つ読めてもいないしまとめるのもなかなか手間だし、というので残念な感じになっております。
もう「まとめる」など言わずに適当にメモ程度でいっか、という気になっております!


とまあ言い訳を置いた上で、今日亘理陽一氏の「学習英文法を考える際の論点を整理する」を読み終えました。
本論考は、「学習英文法」という言葉で表されるものが何か、を整理することから第1節が始まります。

「文法」には、「新しい発話を生成・解釈する心内の体系」(心内文法)や「個別言語の形式・用法についてのべしべからず集」(規範文法)、「熟達した言語使用者の言語行動の記述」(記述文法)など幅広い意味があります(Larsen-Freeman 2009: 518)。(p.66)

氏の整理によれば、文法とは、以下の5つのレベルがあるそうです。

  1. 言語一般に関する文法理論
  2. 英語についての言語学的研究
  3. 言語学的文法:英語の包括的記述
  4. 外国語としての英語の教育文法
  5. 教室における文法の教授・学習授業プログラム(=具体的教材)

1〜3までの研究の目的は、言語の十全な文法記述なので、それをどう教育現場に活かすかは、学習(英)文法研究の範疇であるとした上で、その「学習英文法」が満たすべき要件を第2節以降で論じていくことになります。


学習者の疑問解決の際の「方向づけのベース」になるのが学習英文法であるとの意見を紹介した上で、それを5つのパターンに分類しています。

  1. 例示(言葉や図による説明)
  2. 先行オーガナイザー(階層的に構造化された表やリストによる分類)
  3. アルゴリズムとルール(明確な教授を含んだステップにより形成される流れ図やチェックリスト)
  4. システムモデル(3を関連する周辺分野にまで拡張したもの??)
  5. 胚細胞モデル(各ケースの個別性・多様性をすべてそぎとった、基本的な初期段階の関連性を示すモデル)

それで、1・2辺りは現状よくされている説明だけど、いずれは学習者の中に4・5を形成できるようにしなくちゃね、とのことでした。


また、教材を作る際の留意点に関しては、Ellis(2002)を引きながら、

  1. 明示的記述(与えられる←→発見する)
  2. データ
    • 出所(真正の(教材とは別に存在する)もの←→考案されたもの)
    • テクストの大きさ(個別の文の集まり←→連続的)
    • 媒体(書き言葉←→口頭)
  3. 操作的活動
    • 産出(コントロールされた←→自由)
    • 理解(処理のタイミングが調節可能←→リアルタイムで処理する)
    • 判断(正誤の判断のみをする←→誤った文を訂正する)

といった表が示されていました(p.79)。


さらに、「よい問題」の条件として、藤岡(1982 これは社会科教育に関する論文のようです)を引きながら、

  1. 具体性:問題を構成する要素が(量・感覚・日常生活等の面で)学習者の経験に結びついているということ
  2. 検証可能性:問題に対する答が存在し、しかもどの予想が答として正しいかを調べる手だてが存在するということ
  3. 意外性:子どもたちの予想と正答との間に何らかのズレがあり、結論が多かれ少なかれ思いがけないものになること
  4. 予測可能性:その問題を学習した結果として、同類の新しい問題に対して学習者がより正しい予測がたてられるようになっていくという性質を有していること

を示していました(pp.79-80)。
その「具体性」「意外性」を満たす問題として紹介されてたのがこちら。


A: What did you think of the salad?
B: I thought _________ in it.
i) there was too much apple
ii) there were too many apples


Appleは数えられるから当然 ii)、という誤答をする生徒が多いそうです。てか普通そっち選んじゃうよな…
それだとリンゴが数えられる単位、つまり丸ごといくつも入っているイメージになるんだよ、というのは確かに「意外」だと思います。
(てことで、サラダに入ってるのが自然であろう、刻まれた/ペースト状のリンゴを示すには i) が適切とのことです。へー!)


そして最後に、「4.カリキュラム上の位置づけと展望」の節では、「i)文法指導のタイミング、ii)文法指導の濃度(少数の文法構造を深く掘り下げるべきか、幅広い構造を浅く取り上げるべきかといったこと)、iii)文法構造に焦点を当てた指導と意味に焦点を当てた指導との関係の考察が必要(p.82)」との意見が紹介されています。

では、学習英文法指導のゴールはどこにあるのかと言うと、周縁まで含めれば「文法書概念が関係する言語的・文化的・社会的認識を深めること」、中核としては「文法諸概念の形式・意味・使用にかかわる特徴を理解し、学習者がその時点で抱えるコンフリクトを原理的に解決するモデルを発見・形成すること」だと考えます。このような立場でii)について考えるとき、レベル4,5から見てこのうちのどこまでをどういう順序と比重で取り上げるべきかについては、まだほとんど何も明らかになっていないと言っていいでしょう。少なくとも学習指導要領や教科書、既存の文法解説の項目と順序・比重が最善のものだという確たる証拠はありません。(pp.82-83)

この部分を読んで思い出すのは、院の授業に潜った時に、大方の英語教科書では中1の一番最初にbe動詞を導入してから一般動詞を導入するが、(確か)1つだけ一般動詞から導入するものがある、と聞いた時、それがどういった違いを生むのか質問したところ、あまりはっきりした返答が得られなかったことだ。
なんかの理由があってbe動詞から入ってってるもんだとばかり思っていた自分はけっこうびっくりした。
なかなか実験するわけにもいかないけれど、それがどういった違いを生む(もしくは生まない)のかは気になる。
今の例で言えば、"Are you play tennis?"のようなミスは、be動詞から導入した学習者の方に起こりやすいらしいとも聞いたが、詳しくどうなってるのかは分からないようだ。


本論考は、「文法」を考える際の基盤として有用だと思うし、今学期は生成文法のガチっぽい授業に巻き込まれてってるっぽいので、文法周りを色々考えていこうと思います…!!

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