さんだーさんだ!(ブログ版)

2015年度より中高英語教員になりました。2020年度開校の幼小中混在校で働いています。

テニス部春合宿感想―プロセスアプローチとかとか

30分で書いてみようシリーズ。テニス部の春合宿に行ってきた。夏合宿は,全学年対象の大規模なもの。対照的に,春合宿は高2高1と一部中3という上級生が自分の練習に集中する時間。非常に楽しかった!

スロー再生でコメント

今回は自分は比較的レベルの高くない面を見ていた。(というか,レベルの高い面は僕から言えることはほとんどない気がしている*1。)
iPadアプリのCoach's Eyeを多用しながら,サーブを始めとした色々なフォームを撮ってはスローで観て,コメントを本人に返す,という作業をしていた。今回の合宿では個人的にはサーブを矯正する視点や優先順位が見えた気がした*2。ほんで「回転系のサーブは,体の向きとボールが飛んで行く方向が違うんだよ」とか「腕は常に体の前方向に向かってなるべく振るとよいよ」とか色々コメントする中で,「めちゃ入るようになりました!」と嬉しそうにしている生徒を見るのは楽しかった。自分のサーブも少し良くなったような気がして楽しくなって,食事の後の自由時間で自主練してよくなったように思えたけど,最終日にはなんかよく分からない感じになって終わってしまった。掴んでは手放し,掴んでる時間を少しずつ長くして,うまくなっていくしかないんだろうなあ。その時間が自分にはあんまりないことも悲しいけど,現役部員のみなさんにおかれましては,とことんこだわって取り組んでほしいなと思います。
この前自分で作ったテニスの原理・原則のサーブ頁も更新しようかな…!!

プロセスアプローチ

合宿の時程は,午前は実力順に面に分かれて練習,午後は試合,という感じ。その試合の結果で翌日午前の練習面が変わる。今回は,生徒の試合を楽しめた。とても。
本来生徒の試合は,誤解を恐れずに言えば,客観的に観て楽しいものではない。もちろんレベルが高い生徒のは組み立てとか派手なエースとかあってかっこいいけど,それが観たいならYoutubeでプロの試合動画みたり,プロの大会観に行ったり,究極的には四大大会観戦に行った方が楽しいだろう。
今回自分は部活の中でトップレベルというわけではない生徒の試合を多く見たけど,それでも楽しかった。それはなんでかと考えれば,試合をプロダクトとして観るのではなく,プロセスとして観ようとしたからだと思う。彼らが何を考えて練習し,どんなことに課題を感じていて,どう克服しようとしているのか,的なことに思いを致していた。もちろん彼らの頭の中は分からないけど,ちょこちょこ話をしたりしながら。
たとえば先のサーブ入るようになったと喜んでいた生徒が,やはり試合になると入らない,というお決まりのプロセスを体験しているのも,非常に楽しめた。や,本人たちからするとstruggleに他ならなくて,楽しんでなんかいられないのかもだけど。笑

つなぐ

派手に決めるショットに憧れる気持ちは誰にでもあれど,それだけじゃ勝てないよねというのも周知の事実。今回の合宿では,わりと堅実につなぐテニスをする生徒が順調に戦績を伸ばしている感じがして,それが周りの生徒にもいい影響を与えているような気がした。よかよか。

愚痴

ゴニョゴニョゴニョと。
一番は,自分の弱さをまださらけ出せてないなあということ。試合になるとどうも緊張しちゃってストローク中心に入らなくなって,うぐうぐうぐ,という感じなんだけど,本来それは生徒の前でも誰の前でも,さらけ出してこそ乗り越えていけるものなんだろう。
とは思いつつ,なかなかそこを出せなかったなあ。反省。夏合宿ではもっともっと晒せるように。だからこそ,自分の弱さが白日の下となって悩む生徒は,尊敬するし,応援したい。
二つ目。アドバイスについて。自分は先も書いたように「プロセスアプローチ」を取りたいタイプを気取っているので,ある程度その生徒を観てからコメントしたい。そしてそのアドバイスには,自分なりの優先順位を持たせて,一貫したものにしたい。ということで,個人的にはYoutube動画観まくっているし,他にも色々学んでいるつもり。自分が観て,いいなと思った動画リスト→tennis - YouTubeにも,気づいたら100本以上の動画が入っている。何が言いたいかいまいち不明瞭な感じだけど,教える身として学び続けているか,という決まり文句に落ち着くんだろう。
まあこれは自分がマウント取りたがっているだけで,支配欲の現れなのかもしれないけど。笑 「自分のアドバイスこそが正しいんだ,これを信じよ!」と言いたいのだとしたら,慎まなくちゃいけないところだと思う。なんでそう思うのかはいまいち分かってないけど。
最後。あえてぼかして書くけど,教育したいのか,昔話がしたいのか,範を垂れたいのか,お節介を焼きたいのか,従わせたいのか,よく分からなかった場面があった。止められなかった自分のせいも多分にあるのだけど。

*1:態度面とか生活面ではまあなくもないけど,まあこっちはおいおい,かなと。

*2:正確には「これまでよりは良く見えた気がした」なので,この後また更新されていくんだろうけど。

政策づくり体験ワークショップ

午前国会訪問・午後経産省訪問

という引率に行ってきた。濃かったなあ。
午前は話を聞かせていただいた若手政治家の方の言葉に刺激を受けながら(「人・本・旅」,「政治家は社会起業家」,「26-7歳で決断を行なった」,「根回しの重要性」,「非効率なのに素敵な国。日本は,伸びしろだらけ」),本会議も見学したり,議員食堂でご飯食べたり。よかよか。

午後は、経産省にて政策づくり体験ワークショップ。
このワークショップは,4-5人に分かれた生徒が各々決められたテーマに沿って対策となる政策を打つ,というもの。出てきた案は現役官僚の方々に叩いていただくのだけど,そりゃあ出てきたアイデアはイケてない(部分がある)に決まってて、それを叩くのは専門家に任せておけばいいのかなと,自分は生徒たちの議論を横で小さくなって聞くのに徹していた。

根回しの重要性,というか議論&意思決定の困難性

どうしても最近の自分のトレンドとして、学びの場づくり的なことに興味を持ってしまうから、ああいう「場」では生徒それぞれが地力を発揮できてるか怪しいよなあとは思う。
それは生徒の感想にも如実に現れていて,「自分の案はよかったはずなのに,班でまとめなくちゃいけなかったから不本意な案を発表させられた↓↓」的な感想をアンケートに書く生徒も。
まあこれはぜひ午前中の「根回しの重要性」と絡めて考えて欲しいところではあるけど,このフラストレーションが次へのモチベーションになるといいなと思う。

プロセスアプローチとプロダクトアプローチ

終わった後に引率した先生や他の官僚の方々と飲み会をしながら,プロセスアプローチとプロダクトアプローチ,という言葉が頭の中に浮かんでいた。
つまり,プロダクト(今回は提言する政策)の質はそれ自体問われるべきだけれど,まあそれは専門家に任せて,教員の仕事は,プロセスに寄り添って、つまりどういうプロセスでそのプロダクトが出てきたかをしっかり見て,楽しめることな気がしている。今回はそれにこだわってやってみた次第。なかなか楽しかった。議論をメタのレベルで考えながら、なるべく生徒に気取られないようにそこに存在するってのもきっと思ったよりずっと難しいことだろうなあ。
結局評価にさらされる生徒たちなのだから,だからこそそういうのを度外視して彼らが何をしているか見つめられたら面白いかなと。

補助線とお作法・テンプレ質問

大人のコメントで「なんか小さくまとまっちゃってるよな」というのがある。生徒が無意識にとらわれてしまっている前提に「補助線」を入れてあげてその前提を揺さぶって,より自由な発想を促す,的な話。「補助線」というとなんだかとても自由な発想を持った人しか入れられない印象だけど,実際にはお作法というか,この辺気をつけるべきだよね,みたいなテンプレ質問な気がする。この辺もうちょっと事前に教えてあげていい気がするけど,やりすぎるとそれまた窮屈だよね。


はてさて,当日夜のメモをもとに書き出したら,いつも以上にまとまらなくなってしまった。まあ,仕方ないか。

スーツを脱いで卒業パーティには出るべきだった。

この前卒業式があって,自分が担当した学年の生徒が卒業していった。行ってらっしゃい!
生徒と先生の会が食堂であってから,保護者と先生の会が別会場で*1。そしてその食堂でのスピーチ,どれくらい聞いてくれるんだろうという不安がありつつ,聞いてくれる卒業生,くれない卒業生。後ろの方はうるさいなという気持ちがありつつ,特に注意はできないまま話を終える。
なんかモヤモヤを抱えたままになってしまったことに,一抹の残念さはある。もちろん「聞かれない自分(の話)のプレゼンスの低さ」の表れだから甘んじて受け入れようという気持ちはあったが,同時に,他の先生に対して「構え」てしまった感じもあるのかもなあ,だとしたらくだらない構えだなあ,という感じ。
終わった後,自分とは対照的に,自分の話をきちんと静かに聞かせていた別の先生が「あれも教育の賜物だよね。あんなに静かになって,させたこっちが申し訳なくなる」的な話をしていて,「自分の話も同じくらい聞かせたかったなあ」とか「聞かれなかったなあ」とかいう思いがグルグルしながら,曖昧な対応をしていた。
やっぱり,自分が生徒と対峙している姿を他の先生が見るというのがpressuringなのかもしれない。
密室の中ではいけないよ。開こうひらこう。自己開示のハードルが低い自分ですらこうなのだから,ううむ,先は長いぞ。
ただなんというか,驚いたことに,先は長いのに,来年はもうすぐだ。

*1:生徒との時間の何倍も保護者と過ごす意味は正直よく分からない。多分誰も分かっていない。笑

webサービスを用いた英文ライティング&英作文添削お役立ちTips

英作文の添削をバッタバッタとやってきました。たくさん添削をした受験生の中にも悲喜こもごもで,自分の無力さを(おこがましいながら)感じている今日このごろです。
ということで,自分が添削をする際に使っていたツールを紹介します。

Alfred

なんといってもこれです。macユーザーでこのアプリを使ってない人は,mac人生の半分を損しています*1
Mac - ランチャーアプリ「Alfred」の基本的な使い方 - PC設定のカルマ辺りで基本的な使い方は見て頂ければと思いますが,ひっっじょーーーに便利。
①アプリの起動
②ファイルの起動
③web検索
が主な用途かと思います。①によってマウスクリックの回数は激減するし,②で言えば,ファイル名の頭に日付(「180312_ブログ.txt」とか)を入れておけば,ある日に作ったファイルが一覧できます。
しかし,やはり英語教員として一番役に立つのは,③のweb検索に間違いありません。

Custom Searchという機能を使います。詳しくはこちら→Alfredの 設定 & Tips メモ - Qiita

これによって,自分で設定したkeywordに続けて検索語を打ち込むと,自分の好きなサイトで手軽に検索できるようになります。僕は特にGoogle Ngramをよく使っていました。僕の設定では,gnと打ってから検索語を入力すると,Google Ngramで検索できるようになっています(このgnがkeywordです)。他にもgiでグーグル画像検索,glでI'm feeling lucky*2,mytwiで自分の過去ツイート,などなど,英語関連でない場面でも活躍しております。本記事では,Google Ngramに絞って詳しめに解説をします。

Google Ngram

「①2つの表現のどちらを使うか」「②ある言葉によくくっつく言葉は何か」「③冠詞の選択」の3点でよく使っていました。以下は僕の直観が正しかった例をましましで挙げていますが,調べてみたらあれ僕間違ってた,なんてことも時々あったことを,一応正直に白状しておきます。

①2つの表現のどちらを使うか

生徒が "... does hart with you"と書いてきたとする。あれ,to youだよね。早速,"does harm to you,does harm with you,does harm on you"でNgram検索をかけてみる。一応on youも入れてみた。
Google Ngram Viewer
やっぱり。toだよね。

他にも,生徒が「学問の世界」の訳としてacademic worldという言葉を使ってきた時。もちろん通じなくはないだろうけど,academiaのが普通じゃない?と思う。
Google Ngram Viewer
ほらやっぱり!時とともにacademiaの頻度が上がって1975年すぎに頻度が入れ替わっているのも,なんでか分からないけど面白いねえ。

②ある言葉によくくっつく言葉は何か

たとえば生徒が "take good sleep" という表現を書いてきた時に,なんかしっくり来ないなーと思う*3。その時に,"*_VERB good sleep"でNgram検索をかけると,こんな感じになります。これは,good sleepの前にくる語を,頻度が高い順に示します。"_VERB"は,動詞,という意味です。
Google Ngram Viewer
すると,takeは出てこないですが,getはよく使われるらしい,と分かる。

なお,この言葉同士のくっつき具合:コロケーションに関して言うと,ozdic.comもオススメです。ozdic.com - the English Collocations Dictionary online
たとえばabilityという語を検索すると,それを強める言葉としてexceptional, extraordinaryなどが出てきたり,その前につく動詞としてはhave, demonstrate, acquire, lose辺りが出てきたり,高い低いを表すにはhigh, low(limited)辺りがあることも出てきます。
ozdic - the English Collocations Dictionary online

③冠詞の選択

これはとっても難しい。使い方としては①とほぼ同じですが,take me long timeという生徒表現について,これはa long timeだよな,と思った時に,こんな感じで"a long time/long time"と調べてみる。これは,long timeが使われるうち,何割がa long timeかを表します。
Google Ngram Viewer
long timeには,9割方,冠詞のaがつくことが分かります。同じようにして,sameの前には大体theがつくこともこれで分かります。
Google Ngram Viewer

その他のwebサービス

Google Ngramがもっともよく使う検索でしたが,その他僕が使っていたものを挙げておきます。keyは適当ですが,さあ,全部Alfredに登録しよう!我ながらこれは便利情報大公開なのでは!?!?

key サイト名 URL
alc アルク英辞郎 http://eow.alc.co.jp/search?q={query}
cn CiNii http://ci.nii.ac.jp/search?q={query}
col ozdic http://www.ozdic.com/collocation-dictionary/{query}
dps Do People Say*4 https://dopeoplesay.com/q/{query}
ld Longman Dictionary http://www.ldoceonline.com/dictionary/{query}
lin Linguee http://www.linguee.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E-%E8%8B%B1%E8%AA%9E/search?source=auto&query={query}
mw Merriam-Webster http://www.learnersdictionary.com/definition/{query}
skell SkELL https://skell.sketchengine.co.uk/run.cgi/concordance?lpos=&query={query}
ud Urban Dictionary http://www.urbandictionary.com/define.php?term={query}
wc weblio共起表現 http://ejje.weblio.jp/concordance/total/{query}
ws weblio synonym dictionary http://ejje.weblio.jp/english-thesaurus/content/{query}
jtw Just The Word http://www.just-the-word.com/main.pl?word={query}&mode=combinations
jtwa Just The Word - alternatives http://www.just-the-word.com/main.pl?word={query}&mode=alternatives

{query}の部分に検索語が入ります。他のランチャーソフトで使う場合は,{query}を各ソフト指定の語に変えることが必要かもしれません。
表の一番下,Just The Wordというサービスは最近知ったのですが,非常に便利っぽいです。
たとえば "improve power"という表現をみたとして,なんか不自然だなと思ったとする。その場合,Just The Wordで "improve power"を検索し,alternatives from thesaurusをみてみる。
すると,improveを残すなら,powerよりもefficiencyやqualityがよいこと,powerを残すなら,enhanceやincreaseがよいことが分かる。くっそ便利だな!
また有料なので表には挙げませんでしたが,研究社オンライン辞書も便利です。 https://kod.kenkyusha.co.jp/service/ 勤務校では学校契約してるのでありがたく使わせていただいています。



ある英語の先生と話していて,その人は「最後はネイティヴが言うかどうかだよね」と言っていた。自分はそれに違和感を感じていて,こうしたツールを使ってネイティヴの総和/大集合みたいなものを仲間につけることができれば,個人のネイティヴには勝ることもあるのではないか。Google Ngramを同僚のネイティヴ教員に教えたら,彼はそれを元にして判断基準をつくったりしていた。ふふふ。
先に注にも書いたけど,英語の先生として,正しい表現,おかしな表現に対する感覚を磨く努力はし続けなくてはいけない。同時に,「今の英語」は本の中にだけあるわけではないだろうから,こうしたwebサービスなども並行して使っていくのが英語力涵養には肝要なのではないかなと思う次第です。
他にも色々便利なサービスを知っている方,ぜひコメント欄等でご教示ください!

*1:なお,windowsユーザーの方には,Alfredの代わりに,HainやKeypirinhaといったランチャーソフトがあるようです。ぜひ!

*2:その検索語で一番上に出るサイトに自動で飛ぶ

*3:この「しっくり来ない」感じを研ぎ澄ませることが必要なんだと思います。自分はまだまだ。。汗

*4:これは海外版2ちゃんねる的存在(らしい)Redditの中で使われている表現を洗い出してくれるものです。かなりくだけた表現も出てくることでしょう←あんまり使ったことないw

英作文のモヤモヤと思想統制

英作文,怒涛の添削が終わった*1
本日,国立大学の前期入試です*2。がんばれ!

ということで,英作文添削をズンズカやってきた感想をば。
結局メールでは380件,添付ファイルではそれよりちょっと多いくらい?をやってきました。2月はわりとしんどかったです。笑
サクサクこなす際に自分が気にしていたこととか使っていたツールとかはまた日を改めるとして,今日は添削をしたり生徒と話したりしながら気になったこと。

東大の問題を解いて提出する生徒も多いんだけど,最近東大の問題には画像説明問題なんかもよくある。「下の画像について,あなたが思うことを述べよ」的な。
たとえば2015年。
f:id:thunder0512:20180310073952j:plain
他にも2016年。
f:id:thunder0512:20180310073953j:plain

自分の指導方針としては,
①その画像がどんな画像かを,画像をみていない人にも伝わるように英語にする,
②「思うこと」に関しては正直そこまで重きを置かなくて良い,
という風に言っていました。

①がこの問題の肝だと思っていて,2015年だったら「猫より大きな手」とか「近くにあるものほど大きく見える」などの英語表現が問われているし,2016年だったら「鏡の中の自分」とか「舌を出している」「違う表情をしている」あたりが書けるか,ということだと思うわけです。
②については,だって「思うこと」って言われてるんだからサ。「この画像から一般的に言えること」とかならまだしも,そんなタイソウなことを書かせるわけじゃないと思うんだよなー。ある生徒が2016年の問題で,①はきちんと書いた上で,②として「うちに帰ったら,ペットの犬でもやってみようと思います」で締めてて,とてもいいなあと思ったわけです。

ただ,生徒の中には②で肩肘を張って,「我々の視点の持つバイアス」とか「写真を撮る人の視点によって歪められる現実→メディアリテラシーの重要性」なんかを書く人が多い。ホントにこの画像みてそう思うの!?と不思議に思っていたんだけど,これは塾の指導もあるらしい。

添削のさなか学校で別の生徒とご飯を食べながら話していて,某大手東大専門特化塾での話をされた。
そこでは,2016年の問題演習の解説で「まあこれは視点のバイアスの話を書くのが普通ですよね。『猫かわいい』だけじゃ点は来ないよね」的な指導がなされているらしい。自分としても後半についてはある程度賛成で,「猫かわいい」だけだとさすがにこの画像の構図を組んでいない気がするから高得点かはわからないけど,前段についてはあんまり納得できなかった。
聞くと,演習翌週に配られる生徒模範解答集の中にも,こういう「視点のバイアス」的な解答が溢れるので,「そうか,まあ出来る生徒がこう書くんだから,自分もそう書けなくちゃな」と思うらしい。
もちろん,書けたらそう書くに越したことないというか,そう書いたからと減点されることはないと思うけど,まだ英語力がそこまで行っていない生徒がそういう超絶できる人の答案をみて,こう書けなくちゃと思ってしまうのは,特に直前期には,悪影響なんじゃないかと思うんだよなあ。

とまあまとまりのない話を同僚の国語の先生(上の塾でのバイト経験もあるらしい)にしたら,面白がっていた。彼いわく,自分がバイトしてる当時だったら「バイアスガー的なことを書かないとダメだよね」と同じく言っていたと思うけれど,今の自分は直感的にそれはおかしいと思う。その違いはどこにあるのか,面白い,とのことでした。

ともかく,「ここではこう思うべき」というのは,なんとも思想統制感があってイヤだなあと思ったわけです。もちろん,大多数の生徒はそんなこと思わずにテストで高得点を取るtipsとして受け取るんだろうけど,そうして難しいことを書こう書こう,凝った表現を覚えなくちゃ覚えなくちゃとする中で,結局塾が塾たる権力性を維持する役割を果たしているのかもなあなんて,穿った見方もしてしまいましたとさ。


はてさて,本日午後には結果が出ますね。ご武運を!

*1:本当は国立前期入試が終わった2週間前くらいに終わったんだけど,バタバタでこの記事を書き上げられていなかった。大した記事ちゃうのに!

*2:と当日にアップするはずだったのですが,本日はもうその発表日です。汗汗

ご恵贈いただいた本③『英語ライティングルールブック―基本を学び構成力を養う』

こちらご恵贈いただきました!

めちゃいい本です!(雑

  1. センテンスの作り方
  2. 複数のセンテンスをつなげてみよう
  3. 文章にまとめる
  4. コミュニケーションのための基本単語リスト

という構成になっています。

1. センテンスの作り方
Topic(一般的な言い方では,主語,S)の後ろに,Statement(述部・V以下)を置く,という構成をまず示した上で,意味順を援用しながらさまざまな文・基本的な文法を導入しています。
とても,とてもいいなと思ったのは,「基本的な文法」をコミュニケーション上の要請から明確に示しているところです。
p. 36には以下のようにあります。

この本はライティングの本で,文法の本ではないので全ての文法事項に割くスペースはありません。しかし,今まで学んできたセンテンスの基本的な作り方を応用すれば,難しいと言われている文法項目も基本の上に成り立っていることが理解できるはずです。

―ed/en形や,SVOC, SVOOなども説明をくわえています。


2. 複数のセンテンスをつなげてみよう
前の文に出てきたTopicを後ろの文で再登場させる,その際代名詞などをうまく使う,という話がかなりかみくだいて書かれています。


3. 文章にまとめる
そして,この本はそこでは終わりません。テキストタイプについての情報も豊富です。Narratice, Descriptive, Expository, Persuasiveという区分けをしっかり示す本は,まだそんなに多くないように思います。


4. コミュニケーションのための基本単語リスト
これ,この本の隠れた白眉なのではと思います。
be, have, getといった「超基本動詞」に始まり,feelなどの「感覚を表す動詞」,believe, decideなどの「思考・判断を表す動詞」など,各動詞の自然な使い方が満載です。



ううむ,しっかり読み込んで,来年教える学年の,指導の柱にしようかな。できるかな。

『英語指導における効果的な誤り訂正―第二言語習得研究の見地から』(白畑知彦)のまとめ

読んでみました。学習者の誤り,訂正するの?しないの?一体大丈夫?という本。

英語指導における効果的な誤り訂正: 第二言語習得研究の見地から

英語指導における効果的な誤り訂正: 第二言語習得研究の見地から

自分のメモのために,p.183からの「3. 実際の指導への応用」の項目をまとめておく。詳しい実験結果等も載っていますので,気になる方はぜひ本書を手にとってみてください。

  1. もともと誤りが少なく,誤っていても一時的であるため,指導にさほど時間にかけなくてもよい文法項目
    1. 語順(主要部の位置)
    2. 代名詞の格変化
    3. 進行形のING
    4. 主語とbe動詞の(人称・数の)一致
    5. 主語の非脱落
    6. wh疑問文でのwh語の位置
  2. 日本人英語学習者にとって非常に習得が困難な文法項目
    1. 冠詞(特に定冠詞theとゼロ冠詞)
    2. 不可算名詞の複数形
    3. 前置詞
    4. 現在完了形
  3. 日本人英語学習者にとって比較的習得が困難な文法項目
    1. 三人称単数現在形-s
    2. 進行形や受動態のbe助動詞
    3. 時制・相(現在完了形を含む)
    4. 不規則変化の比較表現(高校以降に学習する範囲)
  4. 規則そのものは簡単であるが,長時間誤りの続く文法項目
    1. 三人称単数現在形-s
    2. 不定冠詞(a/an)
    3. 一般動詞の過去形(特に規則変化形)
    4. wh疑問文での助動詞do/does/did
  5. (日本語と比較しながら)相違を教えるべき主な文法項目
    1. 主語と話題の相違
    2. 自動詞と他動詞の区別
    3. 時制・相(現在完了形を含む)
    4. 分詞の形容詞的用法
    5. 関係代名詞節
    6. 被害受け身(間接受動文)
  6. 意味のある文脈の中で繰り返して練習するのが良さそうな文法項目
    1. 一般動詞の過去形
    2. 比較表現(中学校で学習する範囲)
    3. 可算名詞の複数形
    4. 接続詞
    5. 関係代名詞節
    6. 分詞の形容詞的用法
    7. 受動態
  7. 概念そのものをまず指導すべき項目
    1. 現在完了形
    2. 仮定法
    3. to不定
  8. 説明が足りなかったために誤りをしていた/習得が遅かった項目
    1. 接続詞
    2. 独立所有格
    3. 類似した意味を持つ語の用法
    4. 自動詞・他動詞の区別
    5. to不定

後半,たとえば「意味のある文脈」って?「日本語との比較」って?など気になった方はぜひ本書を読んでみてください。面白かった!